第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「でもここ、轟君の寝室じゃないの?」
「ほとんど使ってねぇし、俺はどこでも寝れる」
「じゃあどこで寝るの?」
「ソファがある」
「それはダメ。轟君はここを使って。私がソファを借りるから」
「それじゃ意味ねぇだろ?」
「…え?それって、どういう…」
「まずは生活リズムを整えることが大事だって医者も言ってたからな。ゆっくりでいい、この環境に慣れてくれ」
恋人でもないのに、どうしてここまで優しくしてくれるんだろうか。普段なら遠慮してしまうけど、轟君の優しさも冬美さんのご好意も〝受け取りたい〟そう思った。
「じゃあ…、私が眠れるようになったら交換だよ?」
「交換…?」
「寝室とソファ」
轟君は一瞬目を丸くして、それから軽く笑った。普段の真面目な顔が柔らかくなり口元が緩む。
「なんで笑うの?」
「いや、俺にはそういう発想はなかったから」
「だってここは轟君の家でしょ?私は他人だし、居候みたいなもんだし…」
「遠慮する必要ねぇだろ」
「するよ。しかも轟君はプロヒーローだよ?そんな人の家に転がり込んでるんだもん。ソファでも十分ありがたいよ」
「凪って意外と頑固なんだな」
「そんなことないよ。普通だよ」
そう言うとまた笑う。轟君ってこんな風に笑うんだってまた一つ、素顔に触れる。他愛もないやりとりの温度が私には心地いい。
「じゃあ眠れるようになったら、交換だな?」
「うん」
「分かった」
「絶対だよ?そんな約束忘れたとかそんな約束してねぇとかはなしだからね?」
「ああ、分かった。約束する」
昨日まではこの夏のどの景色を思い出しても息が詰まった。朝の静けさの残る気配、昼間の熱、オレンジ色の夕日、夜の闇、その全てが怖かった。
でも、今日触れた景色は少しだけ優しく感じる。
きっと大丈夫だって不思議とそう思えた。