第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「実はね、焦凍の一人暮らしは心配だったの。家事もしたことないし、いつも忙しくしてるからちゃんと生活できてるか気になってたの。ここは、部屋も余ってるし、凪さんが安心できる場所なら使ってあげて?」
「轟君、一人暮らしって最近始めたの?」
「4ヶ月前だ。けど、ほとんど事務所で寝泊まりしてたから、まだ一人暮らしって実感もねぇ」
「お布団は寝室に運んであるし、生活に必要そうなものも揃えてあるから、遠慮せず使ってね」
「え、でも…」
「遠慮しないで?こういう時は頼ってね」
〝ね〟と優しい笑顔に頬が自然と綻ぶ。誰かの優しさに触れるのが、こんなにも心地いいなんて思わなかった。
「じゃあ焦凍。後はよろしくね」
「ああ…。ありがとう」
「じゃあまたね、…凪さん」
「はい。ありがとうございました」
もう一度私を見てにっこりと微笑む。それがあまりにも自然で見惚れてしまって、ワンテンポ遅れて頭を下げた。
「…冬美さんって、天使みたいな人だね」
「そうか?」
「私の名前、知ってた…」
「さっき電話した時に、俺がうっかり…。けど、詳しいことは言ってねぇ」
「それでよく許してくれたね。言っても良かったんだよ?」
「姉さんの方がまた話してくれたらいいって言ってくれたんだ」
「そっか。お姉さんから、信頼されてるんだね」
「俺が甘えただけだ…」
そう言いながら、照れを隠すように視線を逸らした。優しいのにどこか不器用で、今まで知らなかった轟君の新たな一面に触れた気がする。
「部屋に案内する」
「うん…」
荷物を抱えた轟君の後を追う。ちらっと見えたリビングは必要最低限の家具だけが置かれていて差し込んだ夕日が部屋をオレンジ色に染めていた。
「ここだ」
襖を開けると、新しい畳の匂いが鼻をくすぐった。部屋の中央には、冬美さんが準備してくれた布団が整えられている。奥にはカーテンに仕切られた大きな掃き出し窓はベランダに繋がっている。
「今夜から好きに使ってくれていい」
部屋の隅に荷物を置きながら、初めからそう決めていたような口ぶりだ。