第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
轟君の背中を追ってエレベーターに乗り込んだ。静かな機械音と沈黙に、勝己の住んでいたマンションの光景と重なる。付き合い始めてからは私の家で過ごすことの方が多かった分、思い出は少ないけど、密室で感じる緊張感はなんとなく似ている。そんなことを思い出しているうちにエレベーターは目的の階で止まり、扉が開く。廊下は広くて静かで、ダウンライトのやわらかいオレンジ色の灯りが照らしている。
「ここの奥だ」
廊下を通り、突き当たりの部屋が轟君の自宅だった。慣れた手つきでカードキーを取り出して、ピッと小さな電子音が鳴る。ロックが外れ、扉が開く瞬間、中からパタパタと軽い足音が聞こえてきた。
「焦凍、おかえり」
明るく弾む声に思わず顔を上げる。玄関の奥から現れたのは、轟君によく似た雰囲気の女性だった。ふわっと柔らかな香りが掠める。
「焦凍、この子ね」
「ああ…」
「……え?」
状況が理解できずに固まっていると、優しく微笑んで話しかける。
「急にごめんなさい。焦凍の姉の、冬美です」
「…お姉さん、ですか?」
「さっきね、焦凍から連絡が入って」
「……え?」
「詳しい事情は聞かないけど、女の子の生活に必要なものを準備してほしいって言われて、急いで用意したの」
「え!?…轟君!?」
「悪い。凪に確認するべきだとは思ったんだが、姉さんに相談したら任せてと言われて…。つい、頼んじまった…」
申し訳なさそうに視線を逸らす。そのくせ後悔はしていない、そんな顔をしてる。
「私、そんなつもりじゃなかったのに…。すみませんっ、ご迷惑をおかけして」
「いいのよ。詳しい事情を聞くつもりはないし、うちは焦凍も含めて男ばかりでしょ?自分以外の女の子のものを買うなんて、…すごく楽しかったから!」
慌てて頭を下げた私に、冬美さんは悪戯っぽく笑った。冬美さんとは初対面なのに、不思議と体の緊張が解れていく。
「荷物はそこに置いてあるからね。後で運んであげてね」
「分かった」
冬美さんの視線の先には段ボールやレディースブランドのショップバッグがちらりと見える。
もしかして、あれは私のために準備してくれたものなのかな…。アパートを出てからそんなに時間は経っていないのに、どうやって集めてくれたんだろうか。