第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
轟君の車に乗り込み、ふと見たナビの画面には17時10分と表示されていた。太陽は傾き始めているのに空はまだ明るい。
「少し事務所に寄る。報告だけを済ませたい」
真っ直ぐに前を向いてハンドルを握っていて、方向指示器のカチカチという音が静かに聞こえる。
「うん」
何を話すわけでもない。ただ車のエンジン音とわずかな振動が伝わる静かな時間。時々、反射した日差しが眩しくて、オレンジ色に染まっていく街をぼんやりと眺めていた。
事務所で報告を済ませた後は、轟君の住むマンションへと車を走らせる。大通りを抜けると、高層マンションが並ぶエリアへ入った。
「この辺なの?」
「ああ…。もうすぐ着く」
「さすがプロヒーローが住むところだね」
ずっとそばにいてくれたから深く考えてなかったけど、轟君は世間から見ればNo.2ヒーロー。住む世界が違うのは当たり前のことなのに、何を今更…と自分に呆れそうになる。
「家は俺が選んだんじゃない。ただ、事務所から近かっただけだ」
「それだけの理由でも、このエリアで住むのってすごいことだよ?」
「和室があれば住むところはどこでもいい」
「和室はどこにでもあると思うけど」
「そうなのか?雄英の寮は和室じゃなかったからな」
「寮だしね」
「だから作った」
「え?何を?」
「部屋を和室にした」
「わざわざ?畳とか持ち込んで?」
「ああ…。和室の方が落ち着くからな」
「私も寮にはいたけど、そんな発想はなかったな」
「……変なのか?」
「ううん、全然変じゃない。轟君らしいなって思っただけ」
掴みどころのない轟君の雰囲気に、さっき感じた緊張感が一気に解けていく。車は並木道を抜けてゆっくりと減速して、タワーマンションの地下駐車場へと入っていく。目の前がコンクリートの灰色に変わっていき、まだ夢の中にいるような気さえした。