第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「退院したらね、時間がゆっくり解決してくれると思う。だからここからは私一人で大丈夫。もだから轟君は仕事に戻って?」
「俺は今、レベル4以上の事件の時だけ呼ばれるようになってる」
「……え?」
「緑谷がチームアップとして来てくれている」
「緑谷君が?どうして…?」
「今は雄英も夏休みに入っているから、その間だけでもヒーローとしての任務を優先させたいって緑谷からの要望だ」
「でも、轟君は?」
「凪のことを優先したい。何かあったらすぐに呼んでくれ。俺はその間、家での報告書の整理がある。事務所で管理できてねぇ分が溜まってるからな。…正直、緑谷の申し出はありがてぇ」
「そんな、たかがこのくらいのことでさ…。ダメだよ、甘えちゃ」
「凪のためだけじゃねぇ」
「……え?」
「別れたとしても爆豪にとっては凪は大切な存在なのは変わりないだろ?」
「でも…。勝己のことを傷つけたのは私だよ」
「それでも凪は優しいから、また自分を責めるだろ?」
窓の外の風が頬を撫で、蝉の声だけが触れる。沈黙の中、凪の瞳が潤んで俺を見上げた。小さく震える唇と泣きそうな表情に、胸が締め付けられる。
「俺は凪に自分を責めて欲しくねぇんだ」
「……轟君」
「凪と再会してから何故か凪のことばかり考えていた…。でもそのおかげであの時一緒にいることができた。これからも辛くなる時が来るなら俺は凪のそばにいたい」
「でも、私は……。まだ、勝己が好きで、もう戻ることはできないけど、勝己のことはきっと消えない。だから思い出す度に私は自分を責めると思う。それが私の受ける罰だから」
「だったらその時には俺がいる。爆豪の代わりにはなれねぇけど、それでも俺は凪を一人にもさせたくねぇんだ」
凪にとって必要なのは爆豪だと分かっている。それでも二度と同じ思いをさせたくはなかった。
気が付けば、俺は自然と凪を抱きしめていた。その華奢な体に胸が痛む。
「ごめんね。…ありがとう」
聞き取れないほどの小さな声が震えていた。
「泣いていい」
「少しだけ、寄りかかってもいい…?」
「ああ…。そのために俺がいる」
凪を抱きしめながら、胸の奥で何かが静かに変わっていくのを感じた。