第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
* 轟side
俺は、何を間違ったんだろうか。
爆豪と凪のためだと信じて疑わなかった。
互いに好きなまま、離れていくのをただ見ているだけなんてできなかった。
あのとき俺が口を挟まなければ、違う形があったのかもしれない。
けど、選ばなかった未来を想像しても意味はない。
面談室の前で立ち尽くしていた俺に、看護師が静かに声をかけた。ドアを開けると、医師がパソコンの画面を見つめている。そばの看護師が声をかけると主治医の視線が、ゆっくりと俺に向く。
「付き添いの方ですね」
「はい」
「処置は終わっています。傷はそんなに深くはありませんが、念のために縫っています。ただ…、傷そのものよりも今回は精神的な負担がかなり大きかったようですね」
「……そうですね。あの、今は凪は…」
「鎮静剤を使って眠っています。しばらくは起こさず、このまま休ませます」
〝休ませる〟その言葉に、わずかに肩の力が抜けた。けど次の瞬間、胸の奥が重く沈む。
俺は、あの場にいたのに…。
すぐそばにいたのに…。
「俺がもっと早くに気付いて止めていれば…っ」
思ったよりも強い声だった。面談室は一瞬静まり、医師は一度だけ小さく首を振った。
「あなたのせいではありませんよ。こういう状態になるまで、本人が無理を続けていた可能性が高いです。ただ、今回はご本人の安全を優先して、1週間ほど入院して様子を見ましょう」
「はい…。俺はどうすればいいですか?何かできることはありますか?」
「そうですね。今は身体の回復というより、まずは眠れる状態を取り戻すことが目的です」
主治医は淡々と告げた。ゆっくりと俺の顔を見つめる視線には、言葉には出さない重みがある。
「目が覚めたあとも、すぐに日常へ戻すのは勧めません。環境を少し整えて、誰がサポートしていくのかを考えておいてください」
「分かりました」
「質問等がなければ、また退院前に一度面談をしましょう」
「はい、ありがとうございました」
主治医に頭を下げ、軽く会釈を返す。相談室前の廊下は静かで、少しひんやりしている。胸のざわつきが落ち着かないまま、俺は凪のいる病室へ向かった。