第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「……轟君?」
喉はカラカラで、声が掠れてうまく出せない。
「凪の様子が気になったっていうのもある。…それと、これ、駐車場に落として行っただろ?」
差し出された掌の上に、小さなチャームがあった。
「拾ってくれてたの?」
「多分、凪のじゃねぇかと思って…。けど家も分からねぇし、適当に歩いてたら偶然凪を見つけて…。よかった、渡せて…」
受け取ったチャームは金具の部分が壊れていた。透明なレジンには白い傷がついているものの、桃色の霞草はそのまま形は留められていた。
安心した途端、膝がふらりと揺れて、目の前が大きく揺れて体の力が抜けていく。
「…っ、危ねぇ」
倒れる…と頭で理解するよりも早く腕を掴まれた。轟君の手が、しっかりと私を支えている。肩を引き寄せられ、近くなった距離に彼の体温が伝わってきて、胸がきゅっと締めつけられる。
「無理するな」
低く落ち着いた声が、耳元で響く。
「…立てねぇなら、俺に掴まれ」
ドクドクと心臓の音が脈打って、汗もすっと引いていく。目に映る街の景色も、別の誰かが見ているようなそんな感覚で、涙の温かさだけがゆっくりと頬を伝う。
「……ごめん、なさい」
息を吸っているはずなのに、酸素を求めるみたいに何度も呼吸を繰り返す。手足が冷たくなっていく感覚すら鈍い。
「謝らなくていい。大丈夫だ……」
どうすればいいのかが分からない。何が怖いのかも分からない。ただ、このまま壊れてしまいそうで、体は震えて、自分だけこの場所から切り離されていく感覚だけが、はっきりと残っていた。
突然、喉の奥がきゅっと苦しくなって、強い苦味がこみ上げてきた。体が強張って、思わず口元を押さえると、視界がぐらりと揺れる。
「……っ」
足に力が入らなくて体が前に屈む。抑えきれずに込み上げた胃液が、喉を焼くように通り過ぎて、少量が地面に落ちた。鼻に残る不快感にさらに気持ち悪さが募る。抱きしめられた背中に轟君の手のひらの温度が伝わる。
「吐き出せ。…いいから」
差し出されたタオルに縋り付くように受け取る。轟君の優しさに、張りつめていたものが一気に緩む。
「ごめ…っ、……なさい」
喉の奥が締め付けられて、うまく声にならなかった。