第4章 HOME 爆豪勝己 / 轟焦凍
「……どうして、そう思うの?」
「爆豪は、誰よりも凪を大切に思ってる。それは俺も緑谷も知ってる」
轟君の言葉は傷口に触れるガーゼみたいだった。でも、そのガーゼもじんわりと黒く染まっていく。
目の前にいてくれるのは勝己じゃない。その現実が余計に苦しくさせるだけ。大切にされるだけの価値がまだ私に残っているのかな、そんな不安が胸の奥を深く刺す。
「ありがとう…。そうだといいな」
「言いづらいなら俺か緑谷が伝えてもいい」
「ううん、それはだめ。自分で言うよ。ただ、今はまだ私の心の整理ができてないから、少し待って」
これ以上、優しさで触れないで、そう願った。惨めな自分をもう、受け入れることすら辛い。
「気にかけくれたのにごめんね。私、今日は帰るね」
「…分かった、…送ってく」
「ううん。大丈夫。少し頭を冷やす。って言ってもこの暑さじゃなかなか冷えないけど。…本当に、心配しないで」
轟君は何か言いかけていたけど、聞こえないふりをして笑顔を作る。背を向けた途端に、胸が締めつけられてまともに息ができないくなる。鞄の紐をギュッと握り締めて、歩けと自分に言い聞かせて一歩を踏み出した。
あれからどうやって家まで帰ってきたのかも覚えていない。ベッドに項垂れる体は重くて、この気温のせいなのか体温も高い気がする。
思い出が多すぎるこの部屋は、勝己と過ごしていた時間で溢れている。繰り返される勝己の私を呼ぶ声に、息がうまく吸えずに、涙で目の前が歪む。
いつかの写真の中の二人に戻れたら…、そんな祈りのような叫びは鈍い痛みを連れてくる。
時間が進めば距離だけが伸びていく。
もう何も望まないから、せめてこのまま、静かに閉じ込めていたい。