第7章 デート
本当に誰も入れないぐらい、自分達の仲がこのまま深まっていけばいいのにな。
向こう岸に着いて、あなたはレストランに彼と入ってからもそんなことを考えていた。
ここは魚料理も肉料理もあるお洒落な川沿いのお店だ。窓側の席からはライトアップされた雄大な河川がのぞめて夜景を満喫する。
「美味しい〜お魚ほろほろだよ。ヴィクトルのお肉もどう?」
「うん、完璧な色合いだね。一口食べる?」
向かい側の彼が一切れくれたので自分も彼の皿に置いて交換した。互いに頬張って笑顔になる。
そういうことも気軽にする彼がなんだか愛しかった。
どこにいても彼は変わらない。
あなたに慈しむような眼差しを向け、時折熱視線も送ってくる。
食後のコーヒーを飲んでる時に、あなたは彼にある質問をした。船での彼の台詞を反芻し、二人の共通点があるのか知りたくなったのだ。
「ねえねえ。ヴィクトルって他に好きなものとか、趣味とかある?」
長く付き合う上では互いの趣味なども大事だと思った。
二人ともファッションに関心があるのは分かる。ヴィクトルはさらっと着こなしてるだけらしいが。
「趣味か。前はスポーツだったけど、今は筋トレかな⋯⋯でもこれじゃつまらないよな。釣りやってた時もあったけどね。うーん、全部男向けだな。あとは音楽かな――」
彼は真面目に答えてくれたが、あなたも小さい頃に父親と釣りに行ったことがあると話したら、彼は驚きながらもやや緊張した顔つきになった。
「音楽ってどんなの? クラシック?」
「はっはっは! あのねえ名無しちゃん、君は俺を誤解してるよ。そういうの聞いてるように見える?」
笑いを抑えて問われてしまい照れ笑いする。なんだか勝手なイメージがまだ拭えないみたいだ。
「これも男くさいかもしれないけど、ロックが好きだな。若いときはフェスとかも行ってたんだけどね。今は全然聞いてないなぁ。最近の音楽はよく分からなくてね」
顎をさすりながら美男子がぼやいているが、彼は急に我に返った。
「うわ、今のすごい年寄りっぽいよな。ごめんね」
「ううん、そんなことないって! 私もロック好きだよ、こう見えて」
周囲には話したことのない事実を明かす。元彼はラップとか聞いてたから趣味が合わなかった。ヴィクトルは年代的にもロックが好きなのかなと考える。