第7章 デート
あのあと二人で、河の向こう岸へ渡るゴンドラに乗った。十人ほどが入る中型船で、足近くまで波がよせて臨場感たっぷりだ。
「名無しちゃん、大丈夫? もっとこっちにおいで」
「うん⋯っ」
ふかふかのソファで彼は安心させるように、ゴンドラでも手を握って肩を抱いててくれた。
他にもカップルがいて寄り添ってるし、ヴィクトルの肩口に頭を預けて寄りかかる。
あなたは段々さっきの独占欲事件が恥ずかしくなっていたけれど、彼の温もりがまだ恋しかった。
「――わぁ、夕日が見えるね。きれいだなぁ」
河の水平線を眺めていると、赤く染まった夕焼けが現れた。二人してロマンチックな光景に目を奪われる。
デートの一場面だけど、きっとずっと忘れないものとして目に焼きつけていた。
すると彼が頭上からこんなことを呟く。
「本当に綺麗だな。きっと俺は一生この景色を忘れないよ」
あなたは美しいため息まじりの彼の横顔にも見とれていたが、はっと顔を上げる。
「今、私も同じこと考えてたよ!」
嬉しくなり教えると、彼のはにかんだ笑顔が向けられた。
「本当? じゃあ俺達はもう以心伝心しちゃってるのかもな。ぴったりだよね、誰も間に入れないぐらい」
ねっ?と悪戯っぽくウインクされて、肩をさらにぎゅっと抱かれた。
その言葉は紛れもなくあなたに伝えられたもので、彼の優しさが染み渡っていた。
だからあなたは夕日で染まった頬で、何度も頷くしかなかった。