第7章 デート
自分は完全にぎこちなくなっていたが、彼はあなたに微笑み、何事もなかったかのようにクレープを受け取ってお礼を言った。
「うわ、すごく美味しそうだ。いただきます、うまい!」
「あ、うん⋯⋯よかった。⋯⋯あの、ヴィクトル、今声をかけられてたよね? 完全に」
「⋯⋯んんっ? あぁ、そうなんだ。おかしな人もいるもんだね」
彼は肩をすくめ、まるで本意ではないというふうに話した。
スマートに対処した彼を見ていたため何の問題もないのだが、心情的にはそうはいかない。
「やっぱりヴィクトルって、モテるんだ⋯⋯!!」
「⋯⋯い、いや。俺は別にモテないよ。ほらこんなおじさんだしさ。大丈夫だよ」
いつも謙遜してそんな風に言うけれど、魅力的な人に年なんて関係ないのだ。現にあなたも出会った時に彼をとても素敵だと思い惹かれたのだから。
「ああいうことってよくあるの? なんか心配⋯⋯もうヴィクトルを一人に出来ないよ!」
「⋯⋯くっ。君はこんな外でそんな可愛いことを言ってくれるの? 抱きしめたくなるだろう?」
片方の手で頬を撫でられるけれど、まだ納得できない。
さっきの場面はショックだったが、不思議と負けん気がわいてきた。こんなことは自分でもめずらしいことだ。
「じゃあ私が抱きしめるね。これ持ってて」
「おっ、本当に――? あぁ、かわいいなぁ。⋯⋯参ったな。俺は本当に君以外見えてないよ。心配なんか必要ないんだからね」
クレープで手が塞がったヴィクトルの胴に抱きつき、人目も気にせず、しばらくそのままでいた。
彼の言葉は嬉しいし信じている。
でも同時に独占欲もわいてくる。
外のデートはあんまりしたことないから、余計にだ。
自分は本当にふさわしいのかな?なんて思いがまた出てきそうになるけど、それよりも彼をもっと自分のものに出来たらな、なんて思いのほうが強くなっていった。