第7章 デート
それからは河川沿いの石畳ロードを並んで歩いた。向こう岸の町並みも綺麗だし、秋で気温は低めだけど天気もよく、いいデート日和である。
「見てみて、ゴンドラがあるよ! ロマンチックで素敵だなぁ〜っ」
「あとで乗ってみる?」
「うん!」
手すりから身を乗り出していた体を振り返らせると、柔らかく笑んでいる大人の彼が映り、我に返った。
あなたの顔がじわりと赤く染まっていく。
「⋯⋯今のすごい子供っぽかった? 恥ずかしい」
「そんなことないよ。かなり可愛かったけど」
彼はくすくすと笑い、大きな手を差し出す。
あなたは視線を落とし、安心してその手を取った。手を繋いでくれるのがとても嬉しい。
こんなに人が多くいる中でも、恋人として認めてもらっているということに。
「ヴィクトルの手、いつも温かいね」
「そう? 君といると熱くなるよ、そりゃ」
「ええっ? 面白いこと言うなぁ。⋯⋯あっ! あのお店、この街の有名なお菓子のやつだ! 待ってヴィクトル、私買ってくるよ!」
「一人で行くの? 大丈夫?」
「平気平気、ここで待っててね。美味しいの食べさせたいんだ!」
あなたはやたらと張り切っていた。
彼にはいつもリードされっぱなしだし、少しは良いとこを見せたい。
前にSNSで見かけた話題のクレープを買いに行き、彼が好みそうなシナモン味のやつを選び、喜び勇んで戻ろうとした。
だがそこで、予期せぬことを目にする。
石畳の道の、橋の手すりを背にして彼は待っていた。
紺のコートにタートルネックをさらっと着ていて、どこかアンニュイな雰囲気で立っている黒髪の彼だ。
背もひときわ高く目立つし、遠くからでもすぐに見つかる。
だがそんな彼に、外国人の二人組の女性が通りすがった。そして「ハイ、ハンサムさん!」と声をかけて立ち止まったのを目にした。
――え。そんなことある⋯⋯?
あなたはビクリと足を止め、両手にクレープを持ったまま固まった。
自分よりも年上の活発そうなブロンドの女性達は、何か彼と喋っていたが、表情は色めき立ちアピールする様子だった。
まるでこの前のジムの出来事が蘇る。
しかしヴィクトルはあまり顔つきを変えず、一言二言喋ったあと、そっと会釈をして彼らと別れた。
「⋯⋯あぁ、名無しちゃん!」
そしてこちらを見たので、あなたもはっとなって彼のもとに向かう。
