第6章 大切な言葉
翌日の金曜の夜、あなたはブティック勤務を終えて店の外に出た。
暗くなった路地を歩いていくと、黒い乗用車が停まっている。
あなたは駆け寄って窓を覗き込んだ。
すると運転席に座ったヴィクトルが微笑みかけてくる。
「お待たせ! 迎えに来てくれてありがとう。仕事大丈夫だった?」
「うん、今日も早く終われたよ。お疲れ様名無しちゃん」
助手席に乗り込むと、こちらに近づいた彼にちゅっと頬へキスされる。
それだけであなたは癒やされ、笑顔が生まれた。
今から数日間はヴィクトルと二人で過ごせるのだ。なんとも贅沢で幸せな週末だろう。
車内では親友のその後も話した。昨夜の事があってから確実に彼らの仲も深まったようで、お付き合いすることになったらしいと。
ヴィクトルもあなたと同じように喜んでくれた。大事な人を見守ってくれる存在がいることは、やはり大きな安心をもたらす。
一方の自分はというと、昨日はずっと一緒だったのに触れ合いが最小限だったからか、不謹慎ながらも彼への欲求がさらに強まっていた。
とくに今日は仕事中でも彼の姿を思い浮かべ、ふわふわと落ち着かなかった。
「そうだ、お腹空いただろう? どこかで食べていく?」
「⋯⋯ええっと⋯⋯ううん。何か買って家で食べよっか」
「それもいいね。——もしかして、早く二人きりになりたい?」
ハンドルを握ったヴィクトルに隣から色めいた視線を投げられて、ぞくっとする。
「そ、そうだよ。だって昨日から我慢してるんだもん」
あなたは恥ずかしさよりも先に正直に認めた。
一瞬彼がくすっと笑ったように感じたが、束の間手をきゅっと握られて熱さがさらに伝わってきた。