第1章 出会い編
翌朝になると彼は六時に起床して、あなたも一緒に目を覚ました。
ルームサービスの朝食を頼んでくれて、テーブルでもそもそと食べる。
「何から何まで、すみません⋯」
あなたがまだはっきりしない目元で呟くと、すでにパリッとしたクリーニング済みのスーツを着た彼は、驚いて見やる。
そして「わっはっは!」と朝から大きな声で笑った。
「なんだい? 急によそよそしくなって。⋯⋯悲しいな。俺とのこと、後悔したわけじゃないだろう?」
まだこんな時間なのに、ソファで大きな体を寄せてきて、じっと囁いてくる。
あなたは耳に灯る熱を振り払うように、小さく首を振った。
「ううん、してないよ」
また会いたいと思ってる――。
そう言いたかったけど、言えなかった。
昨日のずうずうしさが、キラキラした彼を前にして引っ込んでしまったようだ。
「⋯⋯そう? ふふ。帰ったら君がいるかどうか、楽しみだな」
ヴィクトルはまるで賭け事のように、さらりと述べた。
本心は分からないけれど、あくまで選択は自分自身なのだと、再認識させられた台詞だった。