第5章 親友編
彼は彼女の体を少し離し、メガネを直して口を開く。
「僕も会いたいと思ってたよ。でも、タイミングが分からなくて、あと⋯⋯振られて関係が崩れたら嫌だったんだ。⋯⋯情けなくてごめん」
「⋯⋯ううん! そんなことないって。来てくれたし⋯⋯ありがとう。嬉しい」
二人は至近距離で見つめ合い、なんだか見てる方が恥ずかしくなってきた。あなたは邪魔にならない間で声をかける。
「あ、あのー。二人にしたほうがいい?」
「⋯⋯いえ! すみません。僕はもう帰りますから。もう会えたので、自分の力でこれからは⋯⋯。セリアちゃん、送っていこうか?」
「うんっ」
二人の雰囲気にほっとするものの、まだ心配がゼロではないあなたのことに、エリックも気づいていた。
「僕がこのまま彼女を連れ去ったら心配だと思うので、名無しさんも一緒に来られますか? もちろんヴィクトルさんも」
「えっ、いいんですか? すみません、なんかもう。私達皆で飲んじゃってて、お恥ずかしいです」
あなたは恐縮しながらもそのほうが安心だと思い、一緒に彼女のマンションに付き添うことにした。
ヴィクトルも了承してくれて、出発する前にエリックは二人に名刺をくれた。
「ああ、わざわざどうも。俺の名刺も渡しておこう」
「じゃあ私も――」
三人で不可思議な交換をすると、ヴィクトルは声を上げて驚いた。
「んんっ? このレストランで君は働いているのかい? ここ知ってるよ! 凄く美味しいところだよね。魚料理が有名な」
「本当ですか? 嬉しいです。ここはうちが代々経営しているところで、長男が跡を継いだんです。僕はマネージャーをしています」
「そうだったのか、すばらしいな。じゃあ会ったことがあるかもしれないな。会社の食事会でもよく使わせてもらってるんだ。名無しちゃん、今度一緒に行ってみる? とくに大型の魚のグリルが美味しいところだよ」
「えっ、行きたい!」
「私も行く〜」
ちゃっかりセリアもエリックにまとわりつき、皆が笑った。
場の空気が一気に和んだところで、時間も時間なので四人はアパートを出た。