第5章 親友編
そのあとあなたはリビングにセリアの様子を見に行った。
彼女は眠そうな顔つきでソファにもたれかかり、スマホを手にしている。
「大丈夫? 今日は泊まっていきなよね。ヴィクトルはもう帰るって」
「⋯ふぇ? いやだめだめ! まだ帰らないでお願いです!」
「はっ?」
あなたは素で聞き返し、不穏な空気に眉を寄せる。
この子は本当に酔っているんだろうか。まさか芝居なんじゃないだろうかと。
「だめだよそんなの。乾杯したいからってことで車置いてタクシーで来てくれたんだからね。そろそろ呼ばないと――」
「いやもうちょっとだけ! もうすぐ彼が迎えに来てくれるんだって! 二人ともそれまで一緒にいてお願いっ」
彼女が発した台詞が一瞬よくわからなかった。
隣に佇むヴィクトルと顔を見合わせるが、彼のほうが反応がいい。
「んっ? セリアさん、彼をここへ呼んだのかい?」
「そうなんですよ。酔いつぶれちゃったから来て〜ってお願いしたら、すぐに行くって言ってくれて⋯⋯へへへ」
「⋯⋯なっ! ここの住所教えたの!?」
ただふやけた顔つきで「ごめん」といいながら頷く親友に、あなたは泡を吹きそうになった。
「ど、どうしよう、知らない男の人がうちに来るんだけど!」
「落ち着いて名無しちゃん、俺がいるから大丈夫だよ」
焦ったヴィクトルが頼もしく肩を支えてくれる。本当にいてくれて良かったのだが、こんな展開はまったく予想していなかった。
「あのねえセリアちゃんっ! 何やってんのあんたは! 思いつきで行動すんのやめなさいよ!」
「ごめんって! でも一人で会う勇気ないよ〜助けて〜っ」
ウソ泣きする親友にもはや脱力感が生まれる。
しかしこうなったら仕方がない。そもそも自分もヴィクトルとの出会い方がかなりの常識はずれだったのだ。
セリアの意中の人は同じ街に住んでいて、仕事が終わったから車で来てくれるという。
あなたは覚悟してリビングや玄関口を少し綺麗にして待つことにした。