第5章 親友編
「⋯⋯よかった⋯⋯名無しに約束してくれて。うざい親友って思われてもいいんです。もう名無しが泣くとこ見たくないから」
「もう⋯⋯セリアちゃんてば⋯⋯ごめんね心配かけて。私、ちゃんとするからね」
あなたは立ち上がり、ほぼ突っ伏してる彼女を横からハグした。小さくお礼を言って。すると彼女も背中にぎゅっと腕を回してくる。
ダイレクトなやり方には怒ってしまったけれど、彼女の気持ちは確かに伝わった。
親友にも彼に対しても、自分は幸運なことに優しい人々が近くにいてくれるのだと実感する。
ほっと一息つき、グラスを手にとったその時だった。セリアがふと、ぼそっと呟いたのは。
「うぅっ⋯⋯本当は⋯⋯二人のことが、ちょっといいなって思ってぇ⋯⋯」
「えっ? ちょ、いきなりどうしたの。まさか泣いてるの」
あなたは焦って彼女の顔を覗きこむ。
セリアは酔いが回ると喜怒哀楽がさらに出るのである。
「名無し⋯⋯実は私も悩みがあって、今日相談しようと思ってたの。⋯⋯仲良くしてる人がいるんだけどさ⋯⋯全然進展なくて。もう向こうの気持ちがわかんなくて焦ってるんだよね⋯⋯」
彼女は情けない顔つきでもらし、酒をぐびっとあおった。
あなたはまるで立場が入れ替わったように、血相を変えて身を乗り出す。
「えぇ!? そんなの聞いてないよ! どんな人? いつから? どうやって出会ったの?」
そんな必死な姿に隣のヴィクトルもびっくりしただろう。
「えっとぉ⋯⋯半年前にネットで知り合って、そこからゲームのフレンドになってさぁ⋯。はは」
「半年ぃ!? ちょっと、なんで何も言わなかったの! 寝耳に水だよ!」
「ごめんごめん。最初はただのネット友達だと思ってたんだよ。でも自分だってヴィクトルさんのこと秘密にしてたでしょ!」
「いやそれは悪かったってば! でもその人、会ったことあるのっ?」
「ない⋯⋯でも会いたい。どうしよう。助けて名無し⋯⋯へへっ。あっそうだ、今呼んじゃう? 今なら二人の愛パワーでなんでもできそうな気がする!」
「出来ないよ!!」
赤らんだ目元でとんでもないことを言い出すセリアにあなたは叫び、今度こそふらっと後ろに倒れそうになったところをヴィクトルの頼もしい腕に支えられた。