第5章 親友編
「⋯⋯あぁでもお酒も飲んじゃったよ! くぅ〜っ、なんで今日に限って⋯⋯!」
「はっ? なにどういう意味? まさかあんた、この十年来の親友よりも出会って二ヶ月の中年男を優先しようとしてたわけ? まさかだよね、名無し」
「⋯⋯そ、そんなわけないでしょ。確かにすごいチャンスだったけどさ⋯⋯」
久しぶりに会えた、せっかく来てくれた親友を追い出そうなどと思っていない。
しかし本当にヴィクトルになんて言えばいいのか痛恨の極みだった。
「ねえもう返事した?」
「⋯⋯はいはい書きますよ。ええと実は今友達が家に来てて⋯⋯」
「いや待って、ねえそのヴィクトル呼ぼうよ! ここに!」
「はっ⋯?」
「そうだよそうしよう、ちょうどいいじゃん! 私も会いたかったし。二人も会えるんだし一石二鳥だわ〜」
乗り気な彼女にあなたは血の気が引いていく。
それは絶対にないと思った。セリアは今完全に酔っているし、こんな急に友達との場に呼び出すなんて非常識だからだ。
「絶対だめ! 自分だったらって考えてみて、怖すぎでしょ! いきなり付き合って間もない恋人の友達に会えとか!」
「別に? 私だったら普通に行くけどね。楽しく飲み食いだってできるもん」
余裕で笑う性格の違いすぎる友についていけない。
そうこうしているうちに、ヴィクトルから電話がきてしまった。
あなたは立ち上がり、事情を正直に話そうと考えた。
リビングから遠くない台所へ行き、小声で通話に出る。
「⋯⋯あっ、ヴィクトル? ごめんねすぐ返事しないで! うん、今家なんだ。仕事お疲れ様。早かったんだね」
『ありがとう、そうなんだ。名無しちゃんはもうご飯食べちゃった? 食べてなかったら、一緒にどこか――あっ、もし食べちゃってても、少しでいいから会いたいな⋯⋯って思ってさ』
甘い口調でスマートに気持ちを伝えてくる彼に、あなたは電話越しに悶えそうになる。