第5章 親友編
二十分後。親友は衣装や小道具の入った大きなカバンを抱えて登場した。にこやかな顔にボリュームのあるセミロング、丸メガネ姿で、あなたより小柄な女性だ。
「よ〜名無しー、急に悪いね。お酒も買ってきたよ」
「いいんだけどさ〜。まさか泊まらないよね」
「泊まらない泊まらない! ちゃんと帰るって」
シラフなのにすでに酔った感じで入ってきて、あなたは後ろをついていく。彼女は酔ったら中々面倒くさいのだ。可愛らしくはあるけれど。
セリアは新しいアパートを見渡して、植物や雑貨コーナーやらロウソクの飾りなどを物色した。
「あれ? その彼氏の写真は?」
「まだないよ!」
あなたはさっと赤くなり、台所で準備した簡単なパスタを食卓に並べる。二人で小さなカフェみたいな小洒落た空間に落ち着き、向き合った。
照明は少し落として、若い女子同士が最近の話に華を咲かせる。
「パスタ美味い、最高っ!」
「ありがとう。お酒はゆっくり飲みなよ」
「わかってるってぇ」
彼女の口に乗せられながら、あなたは内心ドキドキする。いつ突っ込まれるかと。
「――そんでさ。私もびっくりしたね。まずあんたがやっとあの男と別れたってとこがさ」
「まあね⋯⋯大変だったよ。まあ私も悪いからさ⋯⋯」
「やめてそれ! 最後に浮気までされたんだよ? 9割あいつが悪いでしょ!」
「う、うん。だよね」
彼女を落ち着かせ、あなたも自分のネガティブさを反省する。セリアは何事もぎりぎりまで我慢する自分とは正反対の性格で、きっぱりしている。
そんなところが好きで憧れているところでもあった。
でもそんな彼女にも、別れた本当の理由は言っていない。セックスがまともに出来なかったことだ。
いくら女同士で親友でも、相手のこともあるし性の問題はおおっぴらに言えなかった。とはいえ、元彼の女にだらしなさそうな面は、高校が同じだった彼女には見透かされていたのだが。