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美オヤジを誘って囲われて救われる話

第3章 ジムにて


「どうしたいんだい。まだ俺に心配事ある? なんでも言って」
「ううん違うの。私の問題なんだ。あのね、ヴィクトル。私、ここから出ていこうと思って」

強い覚悟をもって伝えると、彼は相当なショックを受けて固まった。

「⋯⋯え? どうして? たった今気持ちを交わしあったのに」
「うんっ。だから余計に、もっとちゃんとしないとって。いつまでもここにお世話になってたら申し訳ないし、アパートも候補見つけたんだ。⋯⋯離れるのはさみしいけど⋯⋯」

気持ちがしょんぼりとしてくる。
本当に大げさじゃなく、この部屋で彼と過ごせたことは、人生の中で一番楽しくて素晴らしい時間だったのだ。

「そうか⋯⋯。そうだよね。ずっとここでなんて、現実的じゃないよな。⋯⋯でもね名無しちゃん。実は俺も、このホテルは解約しようと思ってたんだ」
「⋯⋯えっ? どういうこと?」
「だって、いつまでも大切な君をここに住ませるわけにはいかないだろう? だから――」

突然の話を耳にして、あなたは急に目の前が真っ暗になる。
不安に駆られたようにヴィクトルの腕を掴んだ。

「そんなのだめだよ! 私のせいで、ヴィクトルの生活に影響出ちゃったら、ほんとにどうすればいいのっ?」
「いや、違うよ、落ち着いて」

想像と違った反応を受け、ヴィクトルは慌てる。
事情を詳しく聞くと、彼にも考えがあるらしかった。

「もちろん君とのことを勝手に考えてしまった俺のせいなんだけど、これは自分自身の問題でもあってね。ホテルに住んでるのは今、会社のプロジェクトが忙しいっていうのもあるんだが、なんというか、仕事以外のことを考えるのが面倒でさ。自分を放棄してた面が強いんだ」

彼は考え込むように指を組み、こうなった経緯を切々と語ってくれた。

「俺は大学の友人達と共同で会社を立ち上げて、創業時からの役員だから、朝から晩まで忙しくてね。仕事は好きだからいいんだけど、それ以外の自分はどんなだろうって、もう長く忘れてしまっていた。そこに興味も意義も見出さないまま、ただやるべきことをこなして過ごしてきたよ。⋯⋯でも君に出会って、それを思い出したんだ。同時にこのままじゃいけないと思った。もっと人間的に生活して、君にふさわしくならなきゃって。そうやってもっと俺を知ってもらって、好きになってもらえたらなって⋯⋯願ってしまったんだ」
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