第3章 ジムにて
「ん、んん、ヴィクトル⋯⋯!」
あなたはホテルのジムから部屋に帰るなり、彼の腕に囲われ、情熱的な口づけをされていた。
「⋯⋯んっ、はぁ、はぁ⋯⋯」
熱でかすむ視界を開くと、ヴィクトルも吐息まじりにうっとりと見つめてくる。
「ごめんね、さっきの言葉が嬉しくて」
抱きしめる力がこめられ、また唇を優しく重ねられた。
二人は見つめ合い、ひとまず自制したヴィクトルは、あなたと一緒に部屋のソファに座る。
「⋯⋯あ、あのね」
「うん。なんだい、名無しちゃん。何でも聞くよ。それに俺に聞きたいことがあったら教えて。どんなことでも話すからね」
彼が真剣に伝えてくれた表情には、少なからず緊張感が漂う。
きっとあなたが告白の返事を保留したにも関わらず、「好きだ」という気持ちを告げてしまったからだろう。
すぐに付き合えない理由が自分にあると思ったのかもしれない。
そうではないのだが、心のどこかで気がかりなことは確かにあった。だからまず、あなたは率直に尋ねてみようと考える。
「あの⋯⋯ヴィクトルって、遊び人なの?」
とはいえこの聞き方は、あまりに失礼だろうと、彼のぎょっと見開かれた瞳で気付いた。
彼の顔つきがみるみるうちに焦っていく。
「やっぱり、俺の懸念ってそれかい?」
「い、いや。だって女の子の扱いが上手だし、クリスさんも夜の付き合いがって言ってたし」
責めるつもりなどなかったけれど、こちらも焦って説明する。
ヴィクトルは身を乗り出し、こんなことを言った。
「女の子の扱いは分からないけど、この年だからある程度の経験はあるよ。でもさっきのクリスの話は、あれはただの仕事終わりの付き合いなんだ。⋯⋯正直に言うと、ラウンジで女性たちと飲むことはよくあった。だがその後にどうこうってことは一度もないんだ」
どうにか信じてもらおうと、こんな美しい大人の男性が懸命にあなたに訴えてくる。