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美オヤジを誘って囲われて救われる話

第3章 ジムにて


「あ、どうも。はじめまして」
「⋯⋯ええっ? いやどうもこちらこそ、はあ、ああ〜。そういうことでしたか! こんな若く美しいお嬢さんとあなた、来ていたとは」

にやりと頷いた金髪の男性は、ヴィクトルよりも先にすべりこんできた。
青い瞳にくるっとしたまつ毛が印象的な美形だ。
背は高めだが威圧感はなく、話しやすそうな人に見えた。

「どうもお嬢さん。僕はクリスと申します。彼の部下です」
「あ、よろしくお願いします。名無しといいます。私はヴィクトルの⋯⋯あの⋯⋯友人です」

丁寧に話したつもりだが、自分で言ってて少し沈んだ。その通りなのに。

そして沈んだ男がもう一人いた。
部下に横入りされ、思うように紹介できなかったヴィクトル本人だ。

「ご友人? 朝にジムで待ち合わせですか? 優雅ですねえヴィクトル」
「君ねえ、朝からよく喋るな。夜に喋ってあげるから。会社でね。ほらあっち行けよ」
「夜って本当ですか。最近付き合い悪いじゃないですか。こういうことだったとは」
「⋯⋯えっ?」

ニマニマした部下のクリスの言葉に、あなたは目を見開く。
ヴィクトルは思わず顔をひきつらせていた。

「ただの飲みの話だろ? 誤解を招くような言い方するんじゃないよ」
「あっそうでした。――ところでちょっと仕事の話があるんですよヴィクトル。例の取引先との面談で――」

慌ただしい彼は真面目なトーンに代わり、上司にうかがいを立てる。
あなたは邪魔をしてはいけないと二人から距離をとった。
ヴィクトルはすぐに戻るねと言って部下とその場で話し込んでいる。

きっとこの場もよくそういう風に使われているのだろう。都会の真ん中で働く一流のビジネスマンの空気を目の当たりにした。

「すごいな、ヴィクトル。やっぱり素敵だな⋯」

呑気に口から出たわけでなく、ひしひしと世界の違いを感じる。
彼の周りには、きっとブティックの店員の二十代前半の子なんていないだろう。自分だけだ。

どうして自分なんかに興味を持ってくれたのか。
やはり分からなくなってくる。
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