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美オヤジを誘って囲われて救われる話

第3章 ジムにて


二人で並んで走り、気分も爽快だ。
だが三十分ほど続けると、だんだんと速度が落ちてくる。

「はあ、はあっ。疲れちゃった。少し休もう」
「俺はもう少しやってるね」
「うん、気をつけてね」

彼と話してあなたはお手洗いに行こうとする。
でもこっそり振り返り、真剣な横顔と美しいフォームで走るヴィクトルを眺めていた。

緩やかな黒髪の襟足が、汗のにじむ首にかかり色っぽい。
こんな貴重な姿を見られて今日は幸運だと感じた。

「ふふっ。私も頑張らないとな」

お手洗いに入り、鏡の前で薄いメイクを確認し、髪も結び直した。
こういうのも楽しいなぁ、と微笑んで出ていくと。

予期せぬことが起きていた。
ランニングマシーンから降りたヴィクトルが、誰か知らない人と喋っているのだ。

見た目は三十歳前後で若く、七三分けの金髪で育ちのよさそうな男性だった。

「ヴィクトル! こんなところで会うなんて。朝から精が出ますね〜」
「⋯⋯ああ、まあね。まさか君も来てたとはな⋯」
「なんですかその嫌そうな顔は。僕もここの常連って知ってるでしょう!」

あなたは離れたとこから見ていたが、彼らは知り合いのようで、とてもじゃないが近づけない。
自分の存在が知られたら、気まずいんじゃないかと思ってしまった。

しかしヴィクトルは、男性の相手をそこそこにあなたを探す。

そして目が合ったとき、彼は柔らかく微笑み手をあげた。

「じゃあな。俺は今日プライベートだから近づかないでくれよ」
「えっ? ちょっと待ってくださいよ――」

向かってきたヴィクトルの後ろからついてきた男性と、あなたは目が合う。
もう少し自然にすればよかったのだが、あなたは職業柄なのか、とっさに微笑み会釈した。
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