第3章 ジムにて
ヴィクトルに告白され、返事はいつでもいいと言われた。けれどあなたの気持ちは、もうとっくに決まっている。
彼の胸に飛び込みたい。
好きという想いは、いつしかずっと心の中にあったのだ。
「⋯⋯ん⋯⋯おはよう、名無しちゃん」
「おはよう。ヴィクトル」
隣に眠っていた彼に優しく微笑まれ、あなたも同じように笑む。
あれから三日が経ち、あなたはまだホテルに滞在していた。
しかし、セックスはしていない。
前も毎日なわけではなかったが、今は眠るときだけヴィクトルに距離を取られている気がした。
「あれ。なんか眠そうだな。ちゃんと寝れた? 今日は休日だから、もっと寝坊してもいいよ」
「う、ううんっ。大丈夫だよ全然、ははは⋯」
朝から不埒なことを考えてしまった。
そう反省する中、ベッドの上で大人な彼の裸体が近づき、そばに座ってくる。
ヴィクトルはあなたの目の下のうっすらしたクマを、心配げになぞっていた。
――どうして触れてくれないの?
そんな思いが、彼を切なく見つめる瞳に表れてしまう。
もしかして、ちゃんと返事をしなかったから、興味が薄れちゃったのかな。
隠れてどんよりと落ち込みながらも、あなたは空元気で起床した。
もし彼とお付き合いが出来たら、自分は彼の恋人としてつり合うのか?
なんてことを毎日考えてしまう。
まず、こんな風に長くホテルに泊まらせてもらってることが非常識だ。
あなたはすでに新しい物件の候補をいくつか決めている。直にアパートを見に行って、契約するつもりだった。
まだヴィクトルには言ってないけれど。
きちんと生活して、それから告白の返事をしようと考えていた。
ホテルの宿泊費も払うつもりなのだが、彼に要らないと言われてしまった。
ここは元々ツインルームで、あなたのことはすでに追加の宿泊者として登録してあるのだと。
何から何まで、お世話になりすぎている。
自分は彼に、どんなお返しができるだろうか。