第2章 元彼編
「うわぁお洒落だね。こんなところで中華食べれるんだ」
「うん。名無しちゃんも中華好き?」
「好き! っていってもテイクアウトが多いけど」
あなたは照れてはにかむ。
今までは確実な経済格差を感じてあまり自分のことを話さなかったが、思いきって明かした。
すると彼は「へえ、俺もアジアの焼きそば好きだよ」と意気投合してくれたので嬉しかった。
やがて食事も運ばれてきて、あなたはヴィクトルとの初の外食を楽しんだ。
「ああやっぱりいいねえ。君とのデートは絶対楽しいと思ってたよ俺は」
「これってデートなの?」
「違うの?」
大人な雰囲気むんむんの彼が目を丸くする。
どうやらあなたの素の態度に翻弄されることが多いようだ。
「名無しちゃん。食べ終わったら外にでない? ここからの風景結構きれいなんだよ」
彼に誘われて、二人はやがて外のテラスへ出た。
教えられたとおり、小高い丘にあるレストランは、街のきらきらした明かりや橋、遠くの河川まで一望できる。
「すごーい、きれい⋯⋯ここいいスポットだねえ」
あなたは見とれるように感嘆した。
今日の怒涛の心の動きが、静まっていくようだった。
寒空に息をふうと吐くと、ヴィクトルがスーツのジャケットを脱いであなたの肩にかけてくれる。
彼の優しさと香りに包まれて、笑顔でお礼を言った。
一瞬、こういうことに慣れてるのかな?
とも思ったが、彼は立派な大人の男だ。モテるだろうし当然だろうとも考える。
そう思うと、少し切ない気分にもなった。
「名無しちゃん。さっきの話の続きなんだけど⋯⋯」
「んっ?」
風景に気を取られていたあなたは、彼の緊張を浮かべた表情にドキリとする。
あなたは忘れたわけでもなければ、とぼけてるわけでもない。若いが恋愛経験のある女性なのだ。自分も誠実に向き直り、耳を傾けた。