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美オヤジを誘って囲われて救われる話

第2章 元彼編


ヴィクトルは感情的にならぬように戒めていたつもりだったが、この若者は早々にその誓いを破らせた。

「彼女と出会ったのは家を出た後だというのは、本当さ。君とは別れたんだから、何しようと自由だろ?」
「だから俺は別れてねえんだよ、口出すなおっさん!」
「いいや、悪いが出すよ。俺はな、お前のせいでまだ彼女にお付き合いを申し込めてないんだ。早く消えてくれないか?」

ヴィクトルは距離を詰め、威圧的にマティアスを見下ろした。彼の黒い瞳は静かに怒りをたたえ、決して逃さないという意思をこめている。

その異様な佇まいに、マティアスは一瞬言葉が引っ込んだようだった。

「⋯⋯なっ⋯⋯⋯⋯あのさ。あんた何言ってんの? いくつだよおっさん。ははは、相当金持ってそうだけどさ。若い女に本気になって恥ずかしくねえのか? 俺等の恋愛に首つっこまないでくれない?」
マティアスがこめかみに血管を浮き上がらせながら凄むと、ヴィクトルは腕を組み、深くため息を吐いた。

「お前みたいなやつに自己紹介なんかしたくないんだけどな、仕方がない。確かに俺は多少の金があるだけの、そこらへんにいるビジネスマンさ。彼女のような心の綺麗な女性に出会えたのは奇跡だといえる」

彼は話す内に、自らの胸に秘めた思いの丈を表していった。

「こんな年の男が本気になってみっともないのは、それはそうだろうよ。だがな、俺の気持ちは嘘じゃない。名無しちゃんを大切にしたいし、出会って短い期間だろうが好きだという気持ちは本物だ。⋯⋯だからこそ、一度好きになった女性を平気で傷つける甘ったれのお前みたいな若造には絶対に渡したくない。近づけたくないんだよ」

ヴィクトルは紳士的な大人の表情を剥ぎ取り、ただただ熱い男の眼差しでマティアスに食らいついた。

あなたの心に、彼の真っ直ぐな気持ちが突き刺さる。

「⋯⋯ヴィクトル」
「ごめんね、名無しちゃん。好き勝手なこと言って。でも俺は君を一人にするつもりはないよ」

そう優しく微笑んだ彼のスーツの襟元が、いきなりマティアスに掴まれた。

「てめえ⋯⋯ッ」

激昂した元彼が殴りかかろうとした瞬間に、あなたはその背中を必死に止める。
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