第2章 元彼編
「ふふ。ありがとう。でも俺だけじゃないよ? 名無しちゃんも気持ちよくなるからね」
自信を漂わせて宣言したあとは彼の言う通りになる。
あなたは彼の肉体に完全に捕まり、これまでにない快感を受けた。
「あっあっあっ、だめぇっ」
熱のこもった肌に隙間なく密着されて、完璧な体躯に揺らされる。
「あーすっごく良い、可愛い顔よく見える。⋯⋯ああ好きだ名無しちゃん」
ヴィクトルは今までになく恍惚とした表情で、あなたに愛を囁き続ける。
まるで色々な制約から解き放たれたように、感情が爆発した様子だ。
「ん、んんっ、ヴィクトル⋯っ」
「んん? 名無しちゃんも言って、俺のこと好きって、ねえ」
大人な彼に浮ついた目つきで願われて、あなたは胸のときめきがとまらなくなる。
そんなこと、言っていいのだろうか?
これではまるで、好き同士みたいだと。
「⋯⋯好き、ヴィクトルが好き⋯⋯っ」
「ほんと? 嬉しいなぁ。⋯⋯俺も好き、#名無し#ちゃんのことが大好きだよ」
彼があまりに柔らかい表情で笑むので、あなたは真っ赤になって受け止めるしかなかった。
「⋯⋯⋯⋯くっ⋯⋯もう、いくよ⋯⋯ッ」
「んっ、あぁあっ」
あなたは勢いを増す彼に掴まり、同時に果てる。
激しく収縮する中に引き込まれるように、彼自身も何度も脈を打っていた。
「はあ、はあ、はあ⋯⋯ッ」
最初にしたときよりも、ヴィクトルが肉体的にも感情的にも、自分をさらけ出してくれたのが伝わった。
「ヴィクトル⋯⋯」
「⋯⋯あぁ、ごめんね。今さら照れてきた⋯⋯」
自分の胸の上に寄りかかってくる彼のことが愛しく感じる。
きっと彼にも、あまりないことだったのかもしれない。
あなたはヴィクトルの柔らかい黒髪に初めて触れた。ずっと触れてみたかったものだ。
指を差し入れて撫でていると、彼が驚いて顔を上げる。
「え⋯⋯? どうしたの名無しちゃん。そんな聖母みたいこと」
「ははっ。なにそれ。だってヴィクトル、可愛いから」
倍ほども年の差がある男性に言うことではないかもしれないが、素直な気持ちを告げた。
彼は大人しい体勢でさっと赤らむ。
「俺おじさんだけど⋯⋯そんなこと言ってくれるの?」
「うん。可愛い。すっごく好き」
見つめ合ってそう伝えたとき、あなたはようやく、自分の心からの思いを言えたと感じた。