第2章 元彼編
あなたは駅近くの大通りで、車を待っている。
ヴィクトルからのメッセージに抑えきれない思いを大胆に返してしまったあと。
電話越しに彼の声を聞き、一気に全身が熱くなった。
迎えに来ると言ってくれたけど、まだ夢見心地だ。
タクシーがそばに停まり、ジャケット姿の彼が本当に降りてくるまで信じられなかった。
「⋯⋯名無しちゃん!」
あなたを見つけたヴィクトルは、ほっとした表情で向かってくる。
「あ⋯⋯ありがとう、こんな所まで――」
彼は突然あなたを広い腕の中に抱きしめたかと思えば、顔を近づけてキスをした。
「んっ、んん⋯っ!?」
唇を塞がれ、体の力が奪われる。
すぐに全身がとろけていって、ヴィクトルの胸板の安心感とぬくもりに包まれていった。
「⋯⋯ん、はぁ⋯っ」
口をゆっくり離されて息をつくと、彼に見下ろされる。
大人な顔つきは眉をよせ、またきつく抱いてきた。
「もう名無しちゃん。心配させないでくれよ。ほら行こう、一緒に帰るよ」
胸にくっついた頭をよしよしと撫でられて、あなたはさらに全身茹で上がる。路上でこんなふうに人から熱いキスと抱擁を受けたことなんてない。
タクシーの運転手さんにどう見られたか気になったが、ヴィクトルは車内でもずっとあなたの手を握っていたため、そんな考えも消し去ってしまった。
ホテルの部屋に着いて、ヴィクトルは上着を脱ぎシャツ姿になったあと、すぐにあなたを腕の中に囲う。
「名無しちゃん、何があったんだい?」
「⋯⋯えっと⋯⋯」
あなたは朝と雰囲気が変わった彼に鼓動がとくとくと鳴りながらも、何も言えないでいた。
彼との甘い雰囲気を自分のことで壊したくなかった。
ヴィクトルはそんなあなたを問い詰めたりせず、ベッドに腰を下ろして、正面に立つあなたの手を握った。
「じゃあ、話は明日にしよう。今は俺のことだけ、考えてくれる?」
彼が下から乞うように見つめてくる珍しい状況に、あなたはこくりと頷く。
すると優しく引き寄せられて、彼の膝の上にお尻をついた。
ヴィクトルはあなたの唇が恋しいかのように、さっきの続きをする。
しばらく二人は甘い口づけをかわしあい、やがてベッドになだれこんだ。