第2章 元彼編
都会にそびえ立つホテルの上階にたどり着き、カードキーをかざして入った。
だが、広い部屋に人影は見当たらなかった。
「⋯⋯⋯⋯いないか」
軽いため息混じりでヴィクトルは佇み、また時計に視線を落とす。
あなたはブティックで働いていて、遅くともこのぐらいの時間には帰っているはずだ。
彼はスーツを脱いでネクタイを外し、黒髪をかきあげた。
夜景をちりばめた窓ガラスには、背が高く外見のいい男が映っている。
けれど表情には失望が広がっていた。
「はあ。酒でも飲むか」
彼は先にシャワーを浴び、そのあとでガウン一枚を羽織り、まだ濡れた髪でグラスをあおった。
なんだか異様に空っぽの気分になる。
いつもは部屋で一人で飲んだりしない。
ここはただ帰って寝るだけの空間だった。
でもベッドに視線を移すと、今朝まで居たあなたの姿を思い出す。
「⋯⋯⋯⋯くそっ、格好つけずに抱いていればよかった⋯⋯」
天井を仰いで吐露する。
そうすればあなたは少しでも、自分に興味を持ってくれたかもしれないなどと自惚れた。
ヴィクトルは紳士ぶってあなたに寄り添って眠ったことを、後悔していた。
そのぐらい、たった一日の出会いであなたという素直で真摯にひたむきに、悩み事に向き合う女性に惹かれていた。