【HUNTER×HUNTER】水面に映る雷光【キルア】
第5章 自覚と独占欲
翌朝。
テティスは少し早く目を覚ました。
焚き火はまだ消えきっておらず、灰の中に赤が残っている。
(……起こさないように)
そう思って動いたのに、足元で小枝が鳴った。
「……起きてたのか」
低く、少し掠れた声。
キルアはすでに上体を起こしていた。
昨夜一晩中、半分は起きて見張りをしていたのだろう。
その瞳には微かに疲労の色があるが、こちらを見る眼差しは鋭い。
『ごめん、起こしちゃった?』
「別に平気、とっくに目覚めてたし」
(……嘘)
テティスは唇を噛む。
キルアが自分を「守るべきもの」として完全に組み込んでしまった。それは、彼が本来持っているはずの奔放な自由を、自分という重しで削っていることに他ならない。
『……水、汲んでくる』
「ああ。……俺も行く」
テティスは水筒を取りに行き、
川辺で水を汲む。
隣を歩くキルア。
その足取りは軽く、彼にとっては
当然の義務であるかのように振る舞っている。
その迷いのなさが、かえってテティスの胸を締め付けた。
川辺で水を汲む。
流れる水面に触れる指先から、微かに波紋が乱れた。
「……おい。念、漏れてるぞ」
キルアが、冷静に指摘する。
『……。……ごめん。制御が甘かった』
動揺がそのまま「発」になってしまっていた。
テティスはすぐにオーラを収束させる。
自分の「乱れ」を即座に自覚し、それを恥じるような鋭い眼差し。
「それくらい、謝るなよ。」
キルアは冗談めかして言う。
「それかなんか悩みでもあるなら、聞いてやるけど?」
――私だけ…気にしすぎ……。
『……別に。……何でもない』
二人はそれから朝食を済ませる。
テティスはモヤモヤとした考えが頭で渦を巻いていた。
(……彼は、私を守るために『自分』を削り続けてる)
(もっと…強くならなきゃ、キルアを心配させないくらい)
いつも通りの朝のはずが、少しぎこちない。
テティスの小さな決意が、二人の関係の大きな波紋になりつつあった。