【HUNTER×HUNTER】水面に映る雷光【キルア】
第5章 自覚と独占欲
昼過ぎ、街道で小さな揉め事が起きた。
通行人同士の言い争い。
念能力者は絡まない。
危険はない。
それなのに。
テティスの身体が、
無意識に一歩、後ろへ下がる。
――キルアの背中の後ろへ。
(……え)
自分で驚く。
キルアは何も言わない。
だが、自然に半歩前へ出る。
それが、当たり前の動きみたいに。
(あ……)
その瞬間、
答えが、静かに落ちてくる。
(私、選んでる)
怖い時も、
迷った時も、
落ち着けない時も。
(この人を)
理由は、
優しいからでも、
強いからでもない。
一度も、見返りを求めなかったから。
一番、安心できるから。
胸の奥が、
じんわりと熱くなる。
(……キルアが、一番だ)
その言葉は、
まだ口には出せない。
出したら、
何かが変わってしまいそうだから。