【HUNTER×HUNTER】水面に映る雷光【キルア】
第3章 過去
焚き火の音が、一定のリズムで鳴っている。
テティスは眠っている。
呼吸は浅くも深くもなく、ただ静かだ。
キルアは見張りを続けながら、ふと彼女の方へ視線を送る。
さっきまでは、ちゃんと距離を取っていたはずなのに。
――いつの間にか、近い。
テティスが、寝返りを打つ。
『……ん』
小さく、声が漏れる。
デジャブかとキルアは身構えるが、
テティスは目を覚まさない。
代わりに、手が伸びてくる。
指先が、キルアの服の端を掴む。
無意識の動き。
『……キルア……』
名前を呼ぶ声は、弱くて、頼るみたいだった。
キルアの喉が鳴る。
「……おい」
起こすべきだ。
そう思うのに、体が動かない。
テティスは、まるで温もりを求めるように
少しずつ距離を詰めてくる。
肩が触れ、背中が寄り
最後には、額がキルアの腕に当たった。
心臓が早鐘を打つ。
完全に、無防備。
キルアは、深く息を吐く。
(……やっぱり、ずるい)
テティスは眠ったまま、
小さく息を吸って、吐いて――
キルアの匂いを覚えるみたいに、身を預けている。
『……あったかい…』
独り言のような声。
キルアは、ゆっくりと、
逃げ道を残すように腕を動かす。
抱き寄せない。
でも、離さない。
その絶妙な距離に、テティスは満足したのか、
それ以上動かなくなる。