第15章 合流
不意に意識が繋がる感覚が戻る。
八重の呼吸と足が止まる。
止まらぬ胸には鎮まれとばかりに胸元の服を握りしめる。
意識を繋がった先に集中する。
〝落ち着け、八重。今からそっちに行く〟
冷静な脹相の声に八重は糸が切れたようにその場に座り込んだ。
冷えた地面が熱を持った身体に心地良い。
整いつつある呼吸を最後に大きく息を吸ってゆっくり吐く。
(……よかった)
ようやく安堵できた。
そしてしばらくはそのまま再び戻ってきた脹相の気配を噛み締める。
その気配が近くに来るまでそうしていたが、そろそろ合流するようだ。
立ち上がり服を叩いて整えて脹相が来るであろう方を向いて待つ。
すると姿を現したのは3mはありそうな大きな呪霊だった。
八重がよく目にするような呪霊とは違い、とてつもない禍々しさを感じる。
八重は一度身体に力が入りはしたが、その隣に10代後半の男性が立っていること、そしてその呪霊の腕に脹相が抱かれていることを気付いて急いで駆け寄る。
それに気付いた脹相も自ら呪霊の腕から降りてきた。
八重は両腕を脹相に伸ばし、頬を包み込む。
先程の戦いで負った擦り傷や打撲を労わるように優しく撫で、肩、腕、爪の先まで何かを確認するように手を滑らせると指先を手のひらに乗せる。
脹相の指先の温かさで冷えた手が温まる。
「…障りはありませんか?」
伺うような目で脹相を見上げる。
脹相は居心地悪そうに顔を背けると「…問題ない」とだけ答えた。
「…よかった……悠仁くんは…?」
脹相が視線だけで所在を示す。
悠仁は未だに呪霊の腕の中。
八重はそちらにも近づくと額に手を当てて、そのまま頬、そして首に触れて呼吸と脈を確認して安心したように手を離した。
呪霊の隣に立つ少年の怪訝な視線に気付き、八重はそちらに向き直った。
「…脹相と悠仁くんを助けてくださったのでしょうか?ありがとうございました」
深々と頭を下げた。
少年は「…いや、えーと」と何やら言い淀んでいる。
そして、それを飲み込むと「あなたは?」と質問された。
その質問に八重は少しだけ考える。
いつもなら間を空けずに「八百比丘尼」と答えていただろう。
ただ、今はそれも違う気がする。