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【呪術廻戦】誰も知らない

第19章 耐え忍ぶ


〝八重、今どこにいる?〟

浮かんだ問いの答えを考える暇もなく、本人の声が頭に響いた。
先程まで頭の中にあった考えが伝わる訳はないのだが、八重は内心ドキリとした。
そして、その衝撃で炭化した心が再び拍動を始めて血が通い始める。
ヒビが入ったところからジワジワと痛みが染み出る。

〝今は…初めに来た地下室にいます…〟

〝そうか。しばらくそこにいろ〟

〝脹相はどこにいるのですか?急に声が届くようになりました〟

〝今は薨星宮のすぐ上だ〟

〝どうしてそこに?〟

〝……〟

〝脹相?〟

〝何があっても…何を感じても、そこを出るな〟

〝え……?〟

それが意味するところはわかっている。
すぐに脹相が戦闘に際する緊張と高揚が跳ね上がる。

(…羂索……!)

八重も火が着いたように立ち上がり、出口へ続く階段を振り返る。
それを見ているかのように〝来るな!〟と叫ばれる。

〝…でも……〟

〝お前はそこで待っていろ。大丈夫だ〟

それ以降、脹相からの〝繋がり〟は止まった。
その代わりに伝わって来るのは戦闘を示す気持ちや痛み。
八重にとっては何度接しても慣れることのない感覚に胸を押さえてうずくまることしかできない。
羂索との戦いはずっと痛みしかない。

(…何が大丈夫なのだろう……)

脹相は明示しなかった。
こんなにずっと痛いのに。

(…何を信じればいいのだろう……)

天元も九十九も八重にただ『信じろ』としか言わない。
何を信じればいいのか明示してはくれなかった。

脹相を?

神を?

仏を?

八重にはわからない。
仏すらも信じられなかった八重がそんなものを信じることはできるはずがない。
それなのに、脹相の言葉一つで動くこともできない。
どこまで耐え忍べばいいのか。
誰も八重に教えてはくれない。
それなのに誰も八重に許しもくれない。

全てが終わるまで?

それが八重にとって救いになるとも知れないのに。
八重にはどうすることもできない。
〝死なないで〟とも〝帰ってきて〟とも言うことすら。
だから八重はただ「がんばって」と祈ることしかできない。
何を頑張るのか明示することもできないのに。
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