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【呪術廻戦】誰も知らない

第18章 サイカイ


昇降機に乗った八重はゴウンゴウンと音を立てて動く機械に圧倒されていた。

「…これが昇降機……」

150年前は気の遠くなるような階段をひたすら降りていた。
その階段の先に何があるのかもわからず、九相図にとっての希望があるのかもわからず、ただ天元に呼ばれたと感じた心だけを信じて、九相図を抱え孤独の中、ただただ降りていた。
今は初めて感じる浮遊感に包まれて、下っているのか登っているのかもわからない。
隣にいる脹相をそっと仰ぎ見れば、目も合っていないのに「俺も初めて乗った」と返ってきた。
九相図と共に下っているのは変わらないのに、今は孤独ではない。
そんなことは脹相自身は気にもしていないだろうが。

「良い世の中になりましたね…」

八重はそう言って、少しだけ微笑んだ。


忘れかけていた自重が戻ってきたと思うと昇降機が止まり、最下層に着いた。
降りたところには古い血痕がこびりついていて、九十九が12年前のものであることを教えてくれた。
言うに、今の呪術テロの因果はその時から始まっているらしい。
そんな話を聞きながら明るい光の中へ歩いていく。
八重は150年前に訪れた薨星宮の景色が広がっているものとばかり思っていた。
しかし、光の中にあったのはただ白だけが広がっている空間だった。
現世への干渉はしないとする天元が拒絶しているのだろういう九十九の言葉に皆は踵を返す。

「帰るのか?」

懐かしい声がした。
八重は誰よりも先に振り返った。
そこにいたのは円柱状の頭部に二対の眼、幅広の口がある異形だった。
これが天元なのだとしたら150年前の面影は全くと言っていいほどない。

「初めまして、禪院の子、道真の血、呪胎九相図、そして宿儺の器」

それでも、穏やかで威厳のあるその声は150年前に別れた、そしてもう遥か昔になってしまったが100年余りを共に過ごした天元そのものだった。

「そして……久しぶりだね、八百比丘尼…いや、八重」

それまでよりも和らいだ優しさのこもった声で名前を呼ばれれば、込み上げる懐かしさに八重は天元の元へ駆け寄っていた。
九十九以外の者はそれに言葉なく驚いたように目を開く。
天元が「分かるかい?」と訊けば、「分かります。何もお変わりありません」と答える八重に天元の4つの目は細められた。
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