第18章 サイカイ
「やはり既知の仲だったか」
九十九はそう呟くと「私には挨拶はなしかい?」と問いかけた。
「君は初対面じゃないだろう」と返す天元の声に八重に向けた優しさの類はない。
八重が2人の間のただならぬ空気を感じ不安気に天元を見ると、天元は「お前は向こうにお戻り。九相図がすごい顔で見ているからな」と言う。
脹相を見てみれば天元の言う通り、かなり睨みを利かせている。
天元にそっと背中を押されて、八重は名残惜しそうにしながらも脹相の横に戻った。
「急に離れてすみませんでした…」
「…いや、天元と知り合いだったことに驚いただけだ」
「…すみません、言うタイミングが分からずに……」
「いい。あとはここにいろ」
「…はい」
2人が言葉を交わす間にも、九十九と天元で話は進んでいた。
そして、天元の知っていることを話す条件として乙骨・九十九・脹相のうち2人がここに残り、天元の護衛をするように言われた。
どうして護衛が必要なのか天元から話がされ、当たり前のように脹相と九十九が名乗りを上げた。
八重は驚き脹相を仰ぐが、そんな八重には目もくれず羂索の命を絶つことが弟たちの救済だと言う脹相を見て、八重は視線を下げるしかなかった。
それぞれの役割が決まり、高専メンバーが今後の役割の確認をしている間に八重は再び天元に近寄った。
「…天元様、私もここに残ってもよろしいでしょうか?」
そう尋ねる八重に天元が視線を向ける。
今の天元の目には瞳がないのに、その視線に先程までの温かみがなくなっていることを感じた。
「いいや、お前は外で待て」
声にも厳しさが乗っている。
「…どうしてでしょうか?」
震えそうになる声を必死で押し出す。
「聞いていただろう?ここに羂索が来る可能性が高い。お前をここに置いておく訳にはいかない」
「その時は私が…」
「いいや、あの羂索がお前に何の対策も取っていない訳がない。お前がいれば真っ先にお前の無力化をするだろう。12年前の禪院甚爾がそうであったように、呪力から脱却された者の介入はそれ自体がイレギュラーだ。お前が羂索の手に落ちれば何が起こるか分からない」
「…でも…私は…」
「分かっている、九相図だろう?それは…信じて待て」
天元の言葉にもう取り付く島はなかった。