第18章 サイカイ
そもそも皆が寝入る前から八重は不思議でならなかった。
脹相は当たり前のように自分を抱えているし、他の3人の若人はそれに対して何のリアクションもしない。
3人と目を合わせても虎杖は「じゃあ、おやすみ」とすぐ寝るし、乙骨は「…お大事にしてください」と笑う。
伏黒に至っては初対面であるためかあからさまに視線を逸らされた。
八重の知るところによると男女の接触は人目を憚るものだと思っていたが、周囲はそうではないらしい。
(時代の流れで人と人との距離感も変わってしまったのかな…?)
永く生きては来たが、世俗に身を置いていた訳でもなく、ここ150年に至っては人との関わりすら持ってこなかった八重は納得行かないまでも、そういうものかと受け入れることにした。
そうして再び揺れる炎を見つめ続けてまた幾ばくかの時間を過ごした。
次第に眠っている3人が身動ぎ始め、そして誰からともなく目を覚ました。
すると、絶妙なタイミングで脹相もパチリと目を開けて、ようやく拘束が解かれた。
夜が明けてもやっぱり3人は脹相には何の言及もなく、八重に対して「具合、どう?」や「顔色、良くなりましたね」とかの声かけのみだった。
伏黒とは未だに視線が合わない。
「ご心配おかけしました。以後、気をつけます」
八重が丁寧に頭を下げれば、虎杖も乙骨も安心したように笑いかけてくれた。
そして、3人が簡単に身支度をしている間に、脹相に近寄る。
「昨夜はありがとうございました。脹相は身体の痛みはありませんか?」
そう聞けば、いつもと変わらない無表情で「問題ない」と返ってきたので、痛みが脹相に戻ったわけではないようで八重も安心した。
身支度が済み、いよいよ高専に向けて出発する時になり、乙骨が「あっ」と声を上げた。
「八重さん、今日の移動はどうします?」
昨日はリカに乗ったので今日も、との確認なのだろうが、八重が答えるよりも先に脹相が「今日は俺が」と話し始めた。
しかし、八重も負けじと「今日もリカさんにお願いします」と言い切った。
また先手を取られては敵わないとばかりの勢いだった。
その勢いに押されたのか脹相は「むっ」と黙ったし、乙骨は「あはは」と苦笑い。
そうして無事に一行は高専へと向かっていった。