第17章 干渉
足にかかる重さが心地良く感じる。
脹相は横を向いているし、もとより暗くてお互いの顔が見えないのも余計な気構えをしなくて済む。
「先の戦い、どこかお怪我はありませんでしたか?」
穏やかにそう聞けば。
「ん、あぁ。腹を刺された」
サラリと物騒なことを言われて八重は「え…」と固まる。
再会してからそんな素振りは少しも見えなかった。
「もう止血はしてある。問題ない」
「…痛みは?」
「まぁ、ほどほどだ」
心配かけまいとしてくれているのだろう。
痛みもあるにはあるのだろうが、脹相の物言いではどれ程のものなのか計り知れない。
「…あとは、どこか辛いところはありませんか?」
「あとは…そうだな、目が疲れたな」
「…そうですか。では、失礼します」
そういうと八重は左手で脹相の目を覆った。
特に抵抗はされない。
「刺されたところは?」
「…右の脇腹だ」
そちらには右手をそっと当てる。
少しの間、言葉もなくそのまま時間が過ぎた。
「…お前の手は、温かいな」
脹相がそう呟くと八重は少し笑って「よく言われます」と返した。
「よくやるのか?」
「比丘尼の時の話です」
「…そうか」
「手が温かいだけで喜んでいただけて、本当に得な体質だと思っています。治療の類はできませんが、手を当てるだけの手当です」
「…十分だ」
八重にとってもその一言で充分だった。
手を当てさせてもらえているだけでも有難いのに。
「ありがとうございます。さぁ、少し休んでください。そうすれば良くなりますから」
「あぁ」
そう言うと脹相は静かになった。
しばらくすると乗っている頭が少し重くなり、規則正しい寝息が聞こえ始めた。
八重の胸が温かくなる。
眠ってもいいと思えるほどの信用を預けてもらえることがこれほど嬉しいものかと噛み締める。
だからこそ、それをそれ以上のもので返したい。