第35章 外出と神社
医療棟…診察室…静かな空調の音がしている
今日は定期検診の日だった
保護措置と言えば言葉は良いが、監視下においての
精神状態と魂への異常がないかの確認だ
本来なら息が詰まるような時間のはずなのに、紅海にとっては少し違った
硝子に会える
それだけが救いだった
ノックをして診察室へ入る
『失礼しまーす』
「ん」
机に向かっていた硝子が顔を上げる
相変わらず気だるげな返事
その顔を見ただけで、少し肩の力が抜ける
『よろしくお願いしま~す』
「はいはい」
椅子へ座るよう促される
紅海が腰を下ろして硝子に向かう
「なんか、気分落ちてる?」
『そ、そんなこと!』
勢いよく否定する
だが、そのまま言葉が止まった
硝子は紅海の言葉を、ただ待っている
『…本当は、そんな事ある』
「だろうね」
即答だった
紅海は小さく笑う
『さすが、硝子…』
「長い付き合いだからね」
高専時代から二人は妙なところで気が合う
騒がしい男子二人から少し離れた場所で、一緒にいることも多かった
だから、こういう変化には敏い
紅海は膝の上で指を絡め、少し迷ってから口を開く
『なんかさ』
「うん」
『悟が隣に住んでると思うだけで申し訳ない』
硝子が一瞬止まる
「何それ?」
『だって』
紅海は困ったように笑う
『悟って、私が思ってるより忙しいのに』
窓の外へ目を向ける
『家帰ったら、生徒たちの個人指導用のカリキュラム作ったりさ…報告書も見てるし…他にも悟を頼ってる人がいたり』
紅海は、五条の隣で住むようになり、思っている以上に、五条が忙しいと言うことを知った
『本当…いつ寝てるんだろってくらい…ショーとスリーパーなのかな』
小さくため息を吐く
『そんな悟に、監視とかさせちゃって…』
静かな声だった…硝子はしばらく黙る
それから、ふっと息を漏らした
「あんま、そこん所は気にすんな」
『でも…』
「五条は案外、気にしてない気がする」
紅海が顔を上げる
『そっかなぁ…』
硝子は紅海の顔の前に人指し指を立てる
「多分、そっちの方が五条にとって困る」
『え?』
硝子は少しだけ言葉を選ぶように考える
「アイツって、自分でやるって決めたことは、忙しいとか面倒とか言わないタイプ…多分」