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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第34章 編入生とイジワル


══閑話══
夜…空に三日月が浮いている
寮の玄関が、静かに開く
編入して2週間…紅海の姿だ

慣れない環境、慣れない人間関係で眠れなかった
誰も嫌な人ではない、むしろ優しい

砂利を踏む音
紅海は中庭のベンチへ腰を下ろした

空を見上げる星がよく見える
家の神社から見る夜空に、少しだけ似ていた

「何してんの?」
声がした
びくっと振り向くと家入硝子が立っていた

手には缶コーヒー
『あ…家入さん』

「たまたま、ほんとたまたま…奇遇」
『え?』

「いや、何でもない」
硝子は視線を逸らしつつ隣へ座る
2人の間に風が抜ける

紅海は何を話していいか分からなくて
家入も無理に話そうとしない
不思議な沈黙だった

缶を開けながら硝子が言った

「最近…毎晩いるね」
『あ…見られてた?』

「窓から見える」
寮を指差し硝子は笑う


『…なんか』

硝子は紅海の言葉を待つ

『みんな優しいし…皆、たくさん話しかけてくれるし…
普通にしてても良いんだなぁ…って思うと、逆に今までどうしてたっけ?って考えて寝れない』
その声は静かだった

「そっか、あいつらうるさいし、慣れるしかないね?」
『確かに!頑張るよ』

「いや、もっと気抜いていこうよ?」

紅海がふっと笑った
『家入さんって、優しいね』
「は?」
硝子が顔をしかめる

『だって、来てくれた』
「たまたまだって」

『ふふ』
信じていない顔
硝子は小さく息を吐く

『あ、そうだ』
紅海が何かを思い出した顔をする
「何?」

『今日の授業、家入さん反転術式の実習でいなかったからノート取ったの見る?』
硝子が紅海を見る…この子、そんな事、気にしてくれるんだ
硝子は思わず笑った

「見たら、授業受けてない言い訳できないからなぁ」
『えぇ!?』

今度は紅海が慌てる
硝子は少しだけ口元を上げた
「でも借りる」
『うん!じゃあ後で持ってく!』

隣では、紅海がまた夜空を見上げている
その横顔を見ながら硝子は思う

なんか居心地いいな
多分、紅海も同じことを思っていた
「紅海って呼ぼうかなぁ」
『えっ』
「いや?」
『嫌じゃない!私も硝子って呼んで良い?』
「どーぞ?」
その日は、いつもより少しだけ長く夜風に当たっていた
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