第34章 編入生とイジワル
『お祖母ちゃん久しぶり』
「もしもし、どうだい?学校は慣れたか?」
浅葱の声は、いつも通り落ち着いていた
『え、えっと…半分くらいかなぁ』
「半分かい…」
『うん』
「五条の息子にイジメられてないかい?」
『うーん…』
紅海は少し考えた
今日の出来事を思い出す
ポテトを取られた
変なジュースを飲まされた
「怒れよ」と言われた
自分の反応を見て、何だか楽しそうだった
『…たぶん、悪気はないのかも?』
「何だよそれは」
浅葱が呆れた声を出す
『うーん』
意地悪をされている気もする
うまく言えないが、嫌な感じではない
ふと紅海の顔が明るくなった
『あ!今日ね、ファミレス行ったんだよ!』
「…ほぅ」
『ほら、私、ファミレスとか、小さい頃行ったきりでしょ?
そしたら五条くんも、最近まで行った事なかったみたいで』
紅海は窓から外をみながら
『一緒だねって言ったら、解んないけど怒られた
三か月先輩だから一緒にするな!だって…面白いよね?』
「…ぷっ」
珍しく、浅葱が吹き出した
『あ笑った』
「いや…それは…」
向こうで肩を震わせているのが分かる
紅海はきょとんとした
「で、どうだい?」
『そうだなぁ…』
紅海は少し考える
『なんかね、よく分からないんだけど
私を、相手にしてくれてるんだなぁって思った』
彼女は人の雰囲気を察知するのが得意だ
『なんか…いっぱい話しかけてくれるし
変な事するし…意味は分かんないんだけど…』
少しだけ笑う
『でも、ちゃんと私を見てくれてる気がする』
電話の向こうが静かになった
紅海は続けた
『みんな普通に話してくれる…だから嬉しいんだよね』
その声は、いつもより明るかった
昔からこの子は何処か孤独を抱えていた
人に構われるだけで嬉しくなってしまう
相手にしてもらえるだけで、満足する
「あんたね、からかわれたら、もう少し、怒ったり断ったり…わがままな事言っても良いんだよ」
『まだ…難しいかも』
「だろうね」
『うん』
二人で笑う
両親を亡くしてから
傷付いても、我慢して
誰にも迷惑を掛けないように
一人で…だからこそ
構ってくれる同級生がいる事が、浅葱には少しだけ嬉しかった
「良かったねぇ」
『え?』
「何でもないよ」
浅葱は電話の向こうで笑った