第34章 編入生とイジワル
高専の校舎が見えてくる
その時、前方の校舎外に人影が見えた
見慣れた後ろ姿だ
「あ…」
紅海がこちらへ気付く
『ご、五条くん、夏油くん……お帰りなさい』
ふにゃり…と、いつもの笑顔
何も知らない顔
自分の高校へ行ってきたぞ、なんて言えない
言うつもりもない
夏油が先に口を開いた
「ただいま、流鏑馬さん、もう夕飯は食べた?」
『ううん、まだ』
紅海は、夏油の方に駆け寄って見上げる
夏油もにこやかに、紅海を見る
柔らかな話し方の夏油は、昔から女子にモテる
紅海が夏油に心を開いているように見えて
五条は、何故か納得できない
「ちょうど悟と、これから食べに行こうかって話していたんだ」
『そっか、良いね』
いつも、2人は仲が良いなぁと羨ましく思う
自分もこんな仲良い友達が、いつかできたら良いなと憧れる
「でさ流鏑馬さんも、一緒にどう?」
「おまっ!」
五条が思わず声を上げる
夏油は涼しい顔をしている
紅海はぱちぱちと瞬く
『……私も一緒に?』
一瞬…五条の胸の奥が、妙に引っ掛かった
『邪魔じゃない?』
「は?」
思わず声が出る
紅海がきょとんとして
『だって二人で行くんでしょ?』
五条は腕を組んで少し苛立つ
「だから?」
『私が行ったら……じゃま』
「だから!なんで邪魔になるんだよ!!
一緒に行きたいって言ってんだろ?」
五条は被りぎみに声を出す
その言葉に紅海は意外だった
『え?』
「え…?」
言った本人も紅海と同じくらい本気で驚いた顔をしている
夏油が小さく目を伏せる
彼女は、今まで、こうやって聞いてきたのだろう
誰かの輪へ入る度に何度も何度も…
クラスメイトと紅海の相性が悪かったと言えばそれだけだが…
五条が頭をカキカキ気まずそうに言う
「……流鏑馬、腹減ってないの?」
『ちょっと減ってるかも?』
「じゃあ、ほら行こ」
『……うん』
今度は、誘いを素直に受けとる
そして、嬉しそうに笑った
その顔を見て
五条は、何故だかまた少しだけ面倒な気持ちになった