第33章 宴と写真
═══閑話═══
玄関のドアが閉まる音がした
賑やかだった気配が、少しずつ遠ざかっていく
部屋に残ったのは静けさだった
テーブルの上には空になった皿に飲み終えたペットボトル
つい数分前まで人がいた痕跡だけが残っている
紅海はソファへ腰を下ろした
『今日はありがとう楽しかった……』
キッチンに使用済みの食器を運んでいる五条が振り返る
「僕なにもしてないけどね~」
紅海は笑う
『ふふっ…盛り上げてくれたでしょ?』
「元々あいつらが勝手に盛り上がってたからね?」
『でも悟がいた方が楽しいよ』
「ふーん」
『なにその反応』
「別に?」
五条は肩を竦めた
少し前まで笑い声でいっぱいだった部屋との落差が不思議だった
『一年生たちも成長したよね』
「まあね」
『虎杖くんも伏黒くんも野薔薇ちゃんも…みんな強くなった』
五条は返事をしなかった
代わりに窓の外へ視線を向ける
その横顔を見て、紅海は何となく察した
嬉しいのだ…たぶん
あの三人を見ている時の悟は、昔よりずっと穏やかだ
『良かった…』
静かな声だった
『ちゃんと育ってる』
五条は笑った
「当たり前でしょ?誰が教えてると思ってんの?」
自信満々な声
その言い方に紅海も笑う
『はいはい、そうだったね』
五条は、紅海の隣に座った
「もっと崇めてもいいよ?」
『調子乗るからやだ』
「ひどくない?」
そんな他愛ないやり取り
こんな形で隣同士に住む未来なんて想像もしなかった
『今日さ、ちょっとだけ高専時代思い出した』
五条が小さく笑った
「歳取ったねぇ」
『急に現実見せないでよ』
「だって事実じゃん」
また笑いが零れる
賑やかな時間は終わり一年生たちも帰った…
けれど不思議と寂しくはなかった
五条はふと紅海を見る楽しそうだった
今日一日ずっと…その顔を見られただけで十分かもしれない
そんなことを思ったが、もちろん口には出さない
だから代わりに…立ち上がり
「紅海」
『ん?』
「皿洗い手伝って」
『今ちょっと良い話してたのに!?』
「だから?ほら早く」
『も~』
文句を言いながら立ち上がる紅海を見て、五条は小さく笑った
こういう時間は案外嫌いじゃなかった