第33章 宴と写真
『…怖いテレビやってて』
「あー」
『消したんだけど、逆に怖くなっちゃって』
「昔からソレ系苦手だったよな」
昔、肝試しして急に静かになっていたのを思い出す
『報告書書きながらテレビ見てて…気付かなかったんだよ』
「なるほどね」
五条は椅子を少し後ろへ引き、ロールスクリーンを半分だけ残した位置で止める
「じゃ、これだけ開けとく? それだけで全然違うでしょ?」
軽く言う
“監視”ではなく“ただ隣にいるだけ”みたいに
紅海は少しだけ肩の力を抜いた
『うん…ごめん』
「なんで謝んの?」
『気が散るでしょ?』
五条は少しだけ微笑み何でもないみたいに返す
「全然?」
その声音があまりにも自然で
やっぱり、悟は優しいな…と
「あ、紅海、髪、ちゃんと乾かせよ?毛根死んで禿げるよ?」
ちょっとだけ、前言撤回!
既に五条は机に散らばった書類へ目を戻している
その横顔を見て、紅海は無意識に視線を逸らした
いや、びっくりするでしょ、あれは…
心の中でだけ呟く
悟って、ちゃんと鍛えてるんだなぁ…と今さらみたいに思った
細身に見えて、無駄がないことも知っている
でも、服の上から見るのと実際は違う
肩の線…腕…ほどよく付いた筋肉
“最強”という肩書きに、妙に納得してしまう身体だった
しかも、さっき目隠しもサングラスもしてなくて
綺麗な眼が見えた
高専時代から知っているはずなのに、真正面からあの眼を見る機会は意外と少ない
淡く発光しているみたいな綺麗な蒼
吸い込まれそう、ってこういう事を言うのかもしれない
心臓がまだ微妙にうるさい
紅海は誤魔化すように、水を飲むべくコップへ手を伸ばした
——別に、変な意味じゃなく
ただ、綺麗だと思っただけ
…でも本人には絶対言わない
調子に乗るし!
そこまで考えて、少しだけ口元が緩む
五条はふと視線を上げてこちらを覗く
「何?」
『別に?』
「今、絶対なんか失礼な事考えてたでしょ」
『考えてないよ』
「ウソ!顔がちょっと面白いの見た時の顔だった」
『なにその細かい分析』
「僕、六眼ですから!」
当然みたいに返される
嘘か本当か解らない微妙なラインの冗談
紅海は苦笑して、ソファへ深く座り直した
怖かったテレビの事なんて、もう半分くらい忘れていた