第32章 監視と隣人
だが紅海にとっては大問題らしい
『だって、悟って何か綺麗じゃん?』
「人類としての感想?」
『前、入った時、モデルルームみたいな部屋だったし
悟の六眼で見られたら、私のダメ人間感が浮き彫りになる気がする……』
六眼にダメ人間見つけ出せる能力有らへんやろ?
あれ?それよりも…
紅海ちゃん…五条さんに幻滅されとうない…っちゅう事か?
だが、あえて言わない
言ったら、紅海が五条を意識しそうだから…
代わりに
「紅海ちゃん…無理して気ぃ張りすぎんでええと思うで?」
『え?』
遊佐は段ボールを持ち直す
「五条さん、案外、人の生活感とか気にせぇへんタイプやろ
むしろ、そういう気の抜けた所、見せてもらえる方が、嬉しいんちゃう?」
紅海は頭の上に『???』と、ハテナを付けて、きょとんとする
その顔を見て、 遊佐は少しだけ視線を逸らした
……あかん…これ以上言うと、 自分の感情まで漏れそうや
「ほら、次、この箱運ぶで?あんま考え込みすぎると熱ぶり返したらあかんし?」
『うん……ありがと』
玄関の外…伊地知が軽トラを手配してくれる
高専宿舎に到着して作業…
軽トラの荷台は、ようやく空になっていた
夕日はもう沈みかけている
森の向こうが赤い
汗ばんだシャツを軽く引っ張りながら、伊地知が深く息を吐いた
「これで……最後ですね」
「いやぁ、伊地知さん、段取り完璧すぎやろ……」
遊佐由布湯が感心したように言う
実際、凄まじかった
搬入順、家具配置
引っ越し申請、監視区域登録
GPSの設置、設定
本棚の書類も、全て既に整理されている
遊佐は先日の繁華街の件でも思った
この人、 補助監督として化け物や…
紅海は部屋の中央で、ぺこりと頭を下げた
『2人とも、今日は本当にありがとう
今日は私、おごるから、どこか食べに行こう?』
その瞬間、遊佐が 「あー……」という顔をする
紅海が表情の変化に気付き首をかしげる
「紅海ちゃん…プライベート、監視必要や言うてなかったっけ?」
『え…』
数秒の停止