第32章 監視と隣人
まだ少し、熱気が残る夕方
流鏑馬紅海のアパートの前には、 段ボールが積まれていた
呪術関係の書類
衣類…生活用品
他の1級術師と比べると、生活レベルが地味だ
高級な時計を身に付けるでもなく…貯金を何千万とするでもなく
ごくごく普通の一人暮らしと言ったところ
『ごめんね、遊佐くん……手伝ってもらって』
段ボールを抱えながら、 紅海が申し訳なさそうに言う
遊佐由布湯は、 玄関横に置かれたケースを軽々持ち上げた
京都から、わざわざ引っ越しを手伝いに来たらしい
「ええんやよ…紅海ちゃんの手伝い出来るん、逆に嬉しいくらいやし
それに、紅海ちゃん、病み上がりやろ?手伝わん方が気が引けるわ」
柔らかい関西の言葉…その声音に、 紅海は少しだけ微笑む
だが、ほんの少し、ため息が漏れた
『はぁ……』
遊佐はちらりと横を見る
「何?五条さんの監視付くん嫌なん?」
『うーん……』
紅海は困ったように眉を下げる
『仕方ない事だし……多分、悟の事だから、提案された処罰を、上の人が納得する案でひっくり返してくれた気がするから
…だから、文句は言えないんだけど』
「文句ありそうやん」
遊佐は苦笑する
『だって……』
紅海は視線を泳がせる
『リビング繋がってるんだよね……気ぃ抜けない気がする』
遊佐が沈黙する…それはそうだ
リビングが繋がっていると言うことは隣室ではない…
実質、ルームシェア…半同棲だ…しかも相手は、 五条悟
遊佐は内心、 かなり複雑だった
羨ましくないと言えば嘘になる
いや、 むしろ滅茶苦茶羨ましい
もしかしたら、これが自分ならば
コレを切っ掛けに、もっと紅海と近づける気がする
でも紅海の性格も知っている
この人、 そういう男女間の距離感に慣れてへんからなぁ…
だから今、 本気で困っているのだろう
「まぁ……五条さん、距離感バグっとるしな?」
『そうなんだよぉ…』
紅海は頭を抱える
『同期だからって、一緒に住んだことなんて無いし
私、そんな、ちゃんとしてないし…
生活感とか、ダラけてるの見られるの恥ずかしいし…
部屋着とかどうしたら良いの?買いに行こうかな?』
「え、そこ?」
思わず笑う…
もっと、男女で半同棲は恥ずかしいから無理!とか、言うのかと思ったら…