第32章 監視と隣人
『待って待って待って!?何してるの!?』
「リフォーム?」
『疑問形で返さないで!?』
混乱している…
隣同士だった部屋のリビングの壁を抜いた
意味が分からない
『えっ……そんな簡単に壁って抜けるの……?』
「術式使えば一瞬だったけど?」
『そういう問題じゃないの!!』
病室の外、通りかかった伊地知が、 ビクッと肩を震わせる
……始まった…
胃が痛い…ちなみに、 申請書を書かされたのは伊地知だ
しかも理由欄『監視効率向上のため』
意味不明だった
「だって監視って言ってもさ」
五条は続ける
「四六時中同じ部屋にいる訳じゃないし普通に生活は分ける」
『でもリビング繋がってるんだよね!?』
「うん」
『なんで!?』
「緊急時に即対応出来るように」
スッと返される…合理性があるのが腹立つ
『いやでも、悟のプライベートが……』
「別に困んないって言ってるでしょ」
『私が困るの!!』
その瞬間、病室の扉が少し開く
硝子だった
「……うるさ…」
『硝子ぉ……』
助けを求める視線
だが硝子は、 コーヒーを持ちながら平然と入ってくる
「まぁ妥当なんじゃない?」
『えっ』
「暴走した時止められるの、五条だけだし」
『硝子まで!?』
硝子は小さく笑う
「安心しろ…悟も結構ギリギリだろ」
「……は?何?」
五条が反応し硝子を睨む
硝子は無視して続ける
「まぁ、処罰書類見てみれば?抜け穴とかあるかもよ?」
そう言った硝子に、紅海は、一緒に見てよぉ!と泣きつくのだった…
一方…
京都═補助監督室
遊佐由布湯は、 送られてきた共有資料を見ていた
【流鏑馬紅海監視体制について】
そこに記載された名前
監視責任者: 五条悟
遊佐は数秒、 黙る
「……はぁ」
乾いた笑いが漏れた
そら、 五条さんならそうするやろな
合理的やし、最強やし、同期で信頼も有る
「役得すぎやろ……」
ぽつりと小さく零す
しかも、 遊佐には解る
これは、 “監視”だけではない
五条悟は、 自分の手の届く場所に置いたのだ
もう、危険が訪れないように、離さないために
遊佐は椅子へ深くもたれた…悔しい
だが同時に、 少し安心もしている
少なくとも、五条悟が隣にいるなら、 紅海は生き延びられる
それもまた、 事実だった