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【呪術】もしも、希望の隣に立てたなら。【廻戦】

第31章 変化と進展


人気のないビルの縁に街を見下ろす影が二つ
呪霊の視界を通して、帳の崩れた現場を眺めている

夏油傑が、静かに目を細めた
隣で、楽しそうに首を傾げる真人

「逃げるとは思わなかったんだよね〜、おっかしいなぁ」
真人は笑う
「取り戻しにいく?」

少し考えるような間
夏油は視線を街へ戻した
「いや、いいよ…今、動くのは得策ではないからね」

意味深に口角が上がる
「……彼女は、もう“種”を抱えた」

真人が楽しそうに肩を揺らす
「へぇ…じゃあ育つの待つ感じ?」

「そういうことだ…また揺らせば、彼女は浮上してくるからね」

夜風が吹く…二人の姿は、呪霊と共に溶けるように消えた

高専 ― 医療棟搬送後
担架が廊下を滑る
紅海はそのまま医療棟へ運び込まれた

外では――地獄の後処理だ
補助監督たちの通信が飛び交う

中心にいるのは、伊地知潔高

電話、書類、警察連携、監視カメラ改竄、目撃証言の整理
「はい、ガス漏れ事故として処理を……ええ、被害者はいません」

通話を切った瞬間
横から感心した声が聞こえる

「……あかん」
遊佐が腕を組み伊地知の手元を凝視する
「凄腕の補助監督とは聞いとったけど…
ソフト&スムーズ……見倣うとこ多すぎや…」

伊地知が少し慌てる
「そ、そんな……恐縮です」

すぐに仕事へ戻り、リストを差し出す
「遊佐さんは、こちら各所のフォローをお願いします」

細かく整理された連絡先一覧に状況別対応マニュアル付き
遊佐は、素直に感心する
「承知しました」

受け取りながら、小さく呟く
「……紅海ちゃん、無事に戻ってきてや…」

医療棟・病室
静かな機械音

ベッドに横たわる紅海

点滴…規則的な心拍
傍らに立つのは家入硝子

モニターを確認しながら言う
「脳波に異常はない
魂への干渉痕はあるけど……壊されてはいない」

少し間を置く
「後は、紅海自身が押し戻す力を維持できるか」

つまり――
医学でも術式でもなく
本人の意思次第だ

五条は病室の隅で壁にもたれている
普段なら軽口が一つは出るが、今回は、いつになく静かだ

黒い目隠しをしていて視線は解らない…

「珍しいね」
「何が?」

「すごく静か…」

五条は答えず…ベッドへ近づく指先が、紅海の手に触れる直前で止まる
触れたら壊れそうで止めた
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