第31章 変化と進展
巫女は紅海の顔で笑っている
だがそこにあるのは、紅海の表情ではない
五条悟は頭をかきながら、心底面倒そうに息を吐いた
「ごめーん!ちょっと僕解んないや」
場違いなほど軽い声
横で遊佐由布湯が青ざめる
「ご、五条さん!あんた、この状況で喧嘩吹っ掛けたらあかんやろ!」
五条は視線を巫女から外さない
「だってさ」
一瞬、遊佐の方を見て、巫女に一歩近づく…圧が変わる
「紅海の身体だろ?紅海のもんじゃん?」
五条さん、もしかして紅海ちゃんに戻るのを待っとんのか?
六眼が、紅海と巫女の呪力の奥を覗き込む
「何いまさら、古の巫女的に出てきてんのさ」
巫女の目が吊り上がる、空気が裂ける感覚
「は!?今は、この女の身体が私だ!私はこの身体で生き直すんだ!」
瞬時に呪力が爆ぜる
地面が軋み街灯が震え、ガラスが細かく鳴る
巫女の足元から黒い波のような呪力が広がった
周囲の人間の微弱な負の感情から微力ながら呪力を吸い上げていく
「邪魔するなら、容赦せん!」
呪力最大出力
一般人の気配が一斉に乱れる
五条は微動だにしない
五条さん…まずいで…遊佐は五条をチラリと見る
これは巫女の魂そのものを核にした呪力操作
放置すれば、街単位で人々の精神汚染が起きるかもしれない
五条は周囲を確認する
「っちぃ、由布湯!」
「っあーもー!五条さんの時間稼ぎが、あらっぽいから!もー!」
遊佐が帳を下ろし薄膜が周りを囲う
だが――ビリッ、と軋む…帳が悲鳴を上げている
「……あかん、紅海ちゃんの呪力全快で出しとるやん」
遊佐の額に汗が滲む
「帳下ろしても、この呪力や……一般人にすぐ気付かれる!」
巫女は恍惚と目を閉じる
「感じる……人の想い……私を満たす……!」
街の感情を喰っている
愛を求めて…埋まらない空洞を埋めるように