第31章 変化と進展
現在
流鏑馬紅海の自宅
室内には、わずかな呪力が残っていた
五条悟が、無言で天井や壁を見上げる
視線は一点…紅海の祖母、浅葱が作った結界札だ
焼き切れた痕跡が少し見える
「……ココ」
指先で触れる
「紅海の婆さんが作った結界か焼き切れてるよね?」
振り向かない
「気付かなかったの?」
伊地知が五条の背後で凍りつき肩を震わせた
「す、すみません!流鏑馬さんの部屋に入ったのは初めてだったもので……!」
五条は結界札を見たまま話を続ける
「紅海の部屋に、何度も出入りされてたら、それはそれで伊地知を消してるよ」
声音に冗談の気配がない
伊地知は笑うべきか謝るべきか判断できず固まり空気が冷える
その時、戸口から声が聞こえた
「ほな、やっぱり――」
現れたのは遊佐由布湯だ
静かに室内を見渡す
「紅海ちゃん、熱出てたし…連れ去られた可能性が高いんちゃいます?」
五条は床へ視線を落とす
六眼が情報を拾い続けるが、中々、紅海の呪力を拾えない
「結界札のせいで、逆に呪力の流れが読みにくくなってるのか……?」
遊佐がしゃがみ込み、破れた護符を指でつまむ。
「何か呪具みたいなもんで、呪力ごと封印されたとかですか?」
五条は答えない…部屋の中央へ歩く
立ち止まるり目を閉じる
わずかに残っている…確かに紅海の痕跡でその後が…
五条の眉が僅かに歪む
「……違う…連れ去られただけじゃない」
伊地知の喉が鳴る
そして五条は、初めて苛立ちを隠さず吐き捨てた
「……最悪だね…紅海じゃない何かの呪力が混ざってる」
紅海は“別の存在”として動き始めているのではないか…
「は?何か?何かって?」
遊佐が答えを待つが、五条も未だ確信が持てない
夜の繁華街
飛び出して真人から逃げた、紅海の形をした巫女は周りを見渡す
「……ここは…」
声が出た瞬間、巫女はわずかに目を見開いた
自分の身体が呼吸で胸が上下している
それだけで、奇妙な感覚だった…
自分の時代と空気が全然、違う
足元は硬い平面…滑らかで冷たい
周囲の言葉を聞いた、通じるし理解できる
いや、これは自分の知識ではない
頭の奥に、別の記憶がある
流鏑馬紅海
巫女は思わず額を押さえた